FEATURE
2019/4/10
California Dreamers #1

Photo by Ryota Kemmochi, Rie Sawada, Toyoshige Ikeyama / Text by Shinya Tanaka
Cari & Rie

実はかれこれ3年連続でNAHBSを欠席していたのだ。

欠席するにはいろいろと理由があり、それは場所だったり、悲しいかなお金であったり、でも一番大きかったのは自身のモチベーションでもあった。

別に自転車そのものが嫌いになったわけではない。
むしろ子供のときよりも大好きになっている自分を知っている。

3年前にポートランドにSimWorks U.S.A.を構えてからというもの、とても多くのサイクリストが僕たちの挑戦に協力をしてくれ、一緒に頑張ろうって行こうぜって、心から応援してくれることを実感している。

やはりこんな仲間に多く出会えるようになると、僕たちの夢はどんどんと膨れ上がっていく。

93` Vintage Sycip

しかしながら最近では自分たちが主として扱うトランスポーテーション ツールのそのすべてを完璧に理解したいとも思わなくなってきているし、もう出来やしないことになってきているのも事実。

モノの製造技術の進歩は人間の進歩から比べると度を越して進みいき、そのうちにペダリング、いやタイヤすら必要じゃなくなる勢いだし、もはや他業界では古い悪しき習慣と目される毎年の決まりきったモデルチェンジやスペックアップ広告だとかを邁進することによって、本当に僕たちが大切にしたいコアユーザーとの目線が交わしにくい現状すら理解している。

すなわち歴史において数々の電化製品メーカーのたどってきたその道を学ぶことなく、それが唯一の成長戦略と決めつけてしまった、パワーという大きな力に心を奪われ、事実大きくなりすぎたイデオンたちはいったいどこへと向かいたがっているのだろうなんてもたまには考えたりもする。(死なばもろともという究極的な考えを持っているのかもしれないのだが。)

Moving forward.

あるポジションにいる人たちとネット電話で毎週のように話すのだけども、彼らの多くはこの状況に疲れ果て、ほとんどがコントロール不能に陥っている現状から、どう抜け出すかの話題で持ちきりだったこの3年、わたしはと言えば自分たちの夢と現実との間に囚われながら、苦手の数字にも疲れ果て、人生においてもそう何度も来ないであろう巨大なジレンマと向き合っていたのは隠さずに話しておいたほうが良い。

何れにせよネガティブを考えるのが得意なのは本性なので、最悪の自体を想定し尽くし、そして考え尽くして出てきた回答とは今回の3年ぶりとなる長期渡米であり、それは2年ぶりとなるシムワークスでのナーブスへの出店につながったということはなんとアイロニックな話だろうか。

また昨年より続くシムワークス製品リリースラッシュに対するその評価とSWコンセプト自体が世界という大きな現場において、誰に、どう受け止められているのかを実際にこの目で見ることによって、さらなる「最悪を想定したい」などと超真剣にネガティブを考えるほど、ひねくれた性格の持ち主なのである。

まぁくだらないネガティブな枕はこれくらいにして、今回の旅におけるベースキャンプとなった場所は久しぶりのサンタローザのシシップ家。 (非常に残念なのだが昨日4/6 シシップ家の当主であるサム シシップがこの世を去ったのだが、サムともかれこれ8年来の付き合いで、空港にわざわざ僕を迎えに来てくれたことや、ナーブスのシシップブースで一緒にカンフーTシャツを売りさばいたり、息子たちの自慢話や自分のカート選手時代の話を嬉しそうに話してくれたことを今でも鮮明に覚えている。 本当に今回の訃報は残念でたまらない。)

ナーブスへの出店準備はシシップの工房と庭でおもちゃ箱をひっくりがえすかのように壮大なスケールで繰り広げられた。 

なにせジェレミーには最後の一台を組み上げるという大きなミッションも残っていた。

今回のチームは全員で5名、ただそのうちの2名(先発部隊として派遣したつもりでナーブスの用意はすべて任せたつもりであったのだけれども…)が自転車でナーブスに行きたいと言い出す始末なので、結果として残った我々がブース設営と初日の運営をほぼ行き当たりばったりで行うことになった。

まぁでも悪くない、その場しのぎはわりと得意だし、スリルも増す。 そんな調子で思い思いに準備を進めていったのだった。

かなり前のアーティクルにも書いたことがあるのだけども、ナーブスに通い続けることによって、自分の内情はどんどんと変わっていった。

初期の頃は最新の物事や珍しいアイデアを探したくて探したくてしょうがなかったのだけど、次第に仲間が増えていき、一緒に時間を過ごすうちにモノを追うだけではだけ決して解決しない事やたどり着けない答えがあることに気づけたのだった。

また周りにばかりとらわれていると、新しいアイデアや進むべき方向へと向かいにくくなることも理解が出来るようになり、今ではその良回答を僕に与えてくれた愛すべきファミリーとの久しぶりの食事会のようなものになっていた。

After Road to NAHBS.

そして今回の渡航の真の目的とは、私たちシムワークスがこの2年でどれだけ成長ができたかを、その愛すべき家族たちに報告するため、セカンドホームとも言える、北カリフォルニアへと向かったのだった。

Nick & Rick

やはりその空気を吸うとカリフォルニアは別格の土地だなって思うのだ。

なんと言ってもその青い空や広がりゆく緑の丘、つまりはその環境が圧倒的原因の源だってことなのだけども、加えて経済的にも絶好調なこの土地の物価は異常なほど値上がり続けても、人びとはなかなかこの環境を捨てようと決断するには相当の勇気がいるだろう。 (投資の流れはカリフォルニアからオレゴンへと若干は移ったがそれはむしろお金だけ、富裕層はいつまでもカリフォルニアにとどまるし、むしろ若者のオレゴンへの流れはやや停滞気味のような気がする。 むしろ最近はカリフォルニアからの移住よりは東や中部からの移住が圧倒的に多くなっているように感じるのは僕の勝手な推測なんだけども。)

Liah & Miles

そしてこの広大なカリフォルニアには、一体どれだけの自転車関連メーカーが存在しているのか想像したことはあるだろうか?

その数を数え、その毎日のように生まれ出るアイデアの源と直接見聞するということはとても有意義なことだと信じている。 大小様々が互いにカウンターを打ち合い、向上を常に意識し、たまには仮想敵を作り、次の日は仲間になったりと目まぐるしく移り変わる状況においても、僕らの周りの多くの人々はどんな協力体制を目指すと自分たちの住むこの世界をモアベターにできるかと考えていることがほとんどであり、そう考えない、考えれない、思ってもいない人たちは結果こちら側の住人ではないと社会的なジャッジがくだされていく。

J & J

カリフォルニア、そう圧倒的なのだ。
人、環境、アイデア、すべてが圧倒的だった。

Travis & Adam

僕はその事実を長きに渡り忘れてしまっていた。
いや特有の飽き性なだけだったのかもしれない。

はたまた自分が変わってしまったことを誰かのせいにしつつ、 心のどこかで、このワガママでワスレンボウでハッパキチガイたちだと、勝手なご都合主義で簡単に納得しようとしていたのかもしれない。

そんな様々な僕のチンケな憶測やミスアンダースタンディングは会場が開いた途端にすべてがぶっ飛んだ。

いろいろとどうでも良くなったっていうのが事実かもしれない。

SEVEN, HUNTER, Retrotec, Sycip, BlackCat, Desalvo, Sklar..

Chopped Chainstay
Gimmicks
The Curves
Junction & Connections
Outer space level
symmetry
Spaceship grade

マイメンたちこそが圧倒的だった。 
多分カリフォルニアだったからだろう。

たまには手を抜いたって、人生に疲れたって、人力だし、不安定だし、一体何を焦っていたんだって、彼らは裏切らないし、ちゃんと戻ってくることがわかったし、これで良いのだと心から思えた。

そして僕にも彼にも帰る場所があるんだとも。

Contemplation

この続きはきっと誰かが書いてくれるだろう、Road to NAHBSやハンドメイドバイクそれ自体のことも。

だから僕は自分の気持をここに正直に書いて、これからもやるべきことを丁寧により深く考えて、最高の仲間に恥じないモノづくりをしようとカリフォルニアの神様に誓った。

そしてもう何からも逃げないぞ、とも。

Road to NAHBS リエのナイトメア編へと続く。

NEW NAHBS FEATURE SERIES


California Dreamers #1 | Text by Shinya Tanaka


California Dreamers #2 | Text by Rie Sawada


California Dreamers #3 | Text by Nicholas Haig-Arack


California Dreamers #4 | Text by Toyoshige Ikeyama


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