SimWorks Original

シムワークス オリジナル


ここはラボみたいな所です。
インスピレーションを具体的にするのにはテクニックとエネルギーが必要です。思いつきが可笑しなうちに伝えられるようスピードも重視しています。日々クリエイトして生きていく、と決めた僕たちの部活的な。
珍品が多いのは、それぞれのアイデアにフィルターをかけないからです。

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John Cageと名付けられたケージが産まれるまで

これは、ジョン・ケージと名付けられた自転車用ボトルケージです。由来となった人物とは裏腹に、彼は至って平凡でした。

材質はステンレスで錆びにくく、取付け位置が2箇所の内から選べるといった素質があるのですが、ウォーターボトルを保持する以外に特に機能は無く、自転車を構成する部品としての必要を充分に満たすこと以外に能はありません。

非凡な点があるとすれば、それがシムワークスによって作り出されたという事でしょう。結果モチーフにキノコが選ばれたのもダジャレから始まっての事でしたし、奇妙な穴だらけのバックプレートはデザイナーのキノコに対する偏見によるものです。ありえないと言えばありえない。

凡才か天才か。ここからはそんなシムワークス製品誕生のサイドストーリー。ひとまず John Cage の詳細を見る

冗談の様に始まったそれでしたが、製品化の道程が決してお気楽ムードで進むものでは無いことは容易に想像されましたし、相応の覚悟が求められました。なにしろKing Cageの様な王国が存在する世界です。簡単な訳がありません。

製品価格、耐久性や重量といったスペック、機能。どれをとっても死角のないそのアメリカ製ボトルケージの流通に幾年も携わっている私達だけに、計画が無謀に思えたのも無理はありません。 ですが、一度火のついた創造性は裏腹に温度を高め、なんとか形にしてやろうとプロジェクトは走り出しました、が、これ実に4年も前のことでした。

僕たちシムワークスが始まった時(2009年頃)、その使命は大きく2つありました。仕事内容と言い換えてもいいでしょう。
1つ目は、海外、主にアメリカからの輸入です。当時世界はトラックバイクをきっかけにしたモーダルシフトを経て精神的にも全く新しい時代を迎えていたのですが、国内のスポーツ自転車関連の流通は古めかしいニッチ業態から脱却できてませんで、もう誰かがやるっきゃない状態だったのです。行こうぜ行こうぜって今でも豆粒サイズのシムワークスですが当時は更に身軽で、身軽というか手ぶらみたいな状態で失って困る程のものもありませんでしたし、新しい世界の新しいディストリビューターを目指して、パパッと小舟を漕ぎ出したんですね。もうそれは荒波にへばりつく落ち葉のようでした。誰もやったことがないのでそれはめちゃくちゃな毎日で、方々に御迷惑をおかけしましたが、でも世界をキャッチアップしたかった。新しい世界の声を日本のみんなに届ける橋渡しをしたかったんです。

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2つ目は、日本国内からの輸出です。品目は国産の自転車部品を主眼に置きました。モーダルシフトは製造業にも大波を寄せていましたので、上記のように遅れをとった流通と国内産業が共倒れになることはどうしても防がなければならないと感じていたのです。国産の自転車部品が僕たちの生命線であることは今なお明らかです。これもまた無謀な小舟で帆を上げた僕たちでしたが、大きな幸運が二つありました。それは現SimWorks USAの支部長である Rie と皆さんご存知の Chris King という二人との出会いなのですが、実に彼らのおかげで米国内に支社を設立するという大台に乗せてもらうことができ、潜在需要に応える拠点としてこの運用を本格化することができたんですね。流通経路の確保に伴って供給が進み、需要も呼応するように増えてきています。おらが国産品を世界の人に愛用してもらえて本当に嬉しいですね。

ざっくり10年、長いようで短い軌跡なんですが、こうして今のシムワークスがあります。小売から始まった僕たちが流通を、そして製造へ。 その道が例え険しくとも、僕たちらしい価値観の表現を続けて行くために、より広い世界を見るために、少しづつ目線をあげていく過程にいるのです。
ただの町の小さな自転車屋も店の一角をカフェにすれば人々が憩うようになったりして、街角が街へと広がっていくように、新しい仲間を頼ったりしながら少しづつできることを増やして、コミュニティは産業へと姿を整えて行くことができると信じています。僕たちはこれを成長と呼んでいます。

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最初の頃の図面。もはや懐かしい…

我々シムワークスは(今の所)自社に生産拠点を持っていませんので、製造を受託してくれるメーカーさんあっての製品開発です。しかし、検索すれば「Tシャツ刷ります」の様にアレコレ依頼先を選べるなんて事はありません。 10倍注文をもらわないとダメ、その形状には加工できませんとか、同じ日本語の筈なのにどうも話が通じなかったり、あっちもこっちも行き止まりで引き返すこともしばしば。工業が盛んな日本ですが小回りの効く工場というのは実に珍しいのです。

とはいえ、言ってみればそのようなパートナー探しの段階で実際の製品の出来栄えが大きく左右されてくる訳ですから、妥協は絶対にできません。

「自転車の部品ですか?面白いですね。 ウチはどんな形にも曲げられますし、小ロットのほうが得意な設備なんです。 製造も早いですよ」

粘り強く探せば親身に応えてくれる職人さんも見つかります。 そして、バンドのメンバーがようやく見つかったかの様に、より良い製品を作り上げる為のセッションはすぐに始まりました。

機能も構造もいたって単純なボトルケージですが、いざ設計を始めてみるとすぐにいくつものハードルが見えてきます。 発想の出発点は自由で楽しいものですが、そこからは現実との折り合い、製造機械の能力や選択できる材料との兼ね合い、コストとの駆け引きをしたりと、大人の事情が続きます。

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激しいライドでもしっかりボトルをホールドできることに対し、取り出し易い事は矛盾していますから、適度なバランスを見出すために試作と実験を繰り返しました。構造や機能は極めてシンプルですが、納得のいくクオリティに到達するのは相当に長い道のりです。そして、使いやすく壊れにくいこと。当たり前で基本的な事がきちんと実現されていること。更に願わくば、僕たちシムワークスの「らしさ」を汲み取ってもらえるようにと、丁寧につくり上げました。

斯くして、誰かが何気なく手にしたそのキノコ型のボトルケージはちょっと奇妙な見た目をしていて、他のどれとも違うムードを漂わせているはずです。それがもしあなただったとしたら、まるで僕たちが撒き散らす胞子の一つがあなたのバイクを苗床にし、ポコっとステンレス製のキノコが生えてくるという結末の目撃者になるのです。それは、新しい日本のキノコです。

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SimWorks – Mushroom in the air Bottle

「走り慣れた通りが不思議な風景に見える。建物は風に揺れる背の低い草のように細かく動いて…」

一人の自転車青年が目にしたある日のマンハッタン。そのスケッチがボトルとなって新登場。ジョンケージにこれほどピッタリなボトルもないでしょう。

 

 


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