伊豆を巡る冒険
半ば強引に会社を閉めてライドに出ることにしたシムワークス。
愉しみを売りにするんだから、僕らも楽しいことに触れ続けていなければいけない、やっぱり。
販売店の皆様には少しご迷惑をかけることになるけど、どうかお許しください。
仕事人間が過ぎてつまらない連中になっては元も子もない、と申し合わせて早朝に集まった。
向かうは伊豆半島。5時間の旅。
Day 1 松崎
伊豆縦貫自動車道を降りる頃には、予報通りというか、願望虚しくポツリポツリ。
世界の中心、松崎の小さな漁港でヤマブシトレイルの皆様にお迎え頂いた頃には本降りに。
とりあえずおなかを満たしながらノープランなりのプランを練りましょうと向かったのは地元のお寿司屋さん。
その海鮮クオリティの高さにアドレナった僕らは、雨に霞むヤマブシトレイルのスタンダードルートに吸い込まれて行ったのです。
彼ら西伊豆古道再生プロジェクトによる、歴史ある古道の再生・維持と、アクティビティの両立事業は、地元の若いエネルギーとフレッシュなアイデア、その賛同者らの試行錯誤が重ねられて4年が過ぎたそうだ。
名ガイドに誘われつつ、尾根伝いに進む。
広葉樹の積もった土壌はふかふかとして、実に気持ちがいい。
すべてがしっとりと濡れて、森が活力に満ち溢れているのが判る。
そんなパワーが影響したのか、僕たちもキノコの様に喜び、舞い踊りだした。
これ等の古道、元は炭焼きのソリを上げ下げする為のものだったそうな。
倒した木を炭にし、軽くして山から下ろす。その炭を暮らしに役立てる。
何世紀にもわたる山と人の良好な関係とその維持が、時代の流れと共にその形を少しずつ形を変えながら、今も続いている。
その歴史の端っこ、今という時代の生き方として、お手本みたいな人達と出会えて嬉しい。
ありがとうございました。
美しいトレイルを駆け抜けて街へ降りてくればすぐ海の幸。
遊んで食ったら温泉と来たもんです。
伊豆、なんとも豊かではありませんか。正直うらやましい。
シムワークス柳瀬は、この日の為に慌ててこのシエロを組んでいた。
にょきにょき動くサスペンションは使い切れないし要らない、とフルリジッドを好む彼は、至極ご満悦の様子。
ゆっくり山の中に浸りたい僕もアグリー。
一方カルチャークラブ横山はこの日、ジ・オマージュを履いたラフライダーで出撃。
ウキャウキャ叫びながらビョンビョン駆け回る姿は正にケモノ。
ヤマブシトレイルでは始めてのドロップハンドルだったそうな。
→カルチャークラブブログへ
一時帰国中のシムワークスUSA澤田は、サークルズ渡邉号を拝借。
小さな漁港の、しっとりとした雰囲気に赤が映える。
もうカメラはスブ濡れ。
あと夕焼け空も、伊豆の名物。
恋人岬からは恋の成就を願う打鐘が鳴り止むことはないが、おとなりの旅人岬は閑散としているそうです。
ネーミングって大事ね、とパープルに染まる景色の136号線で宿へと向かいました。
Day 2 伊東
沼津港の食堂で朝から海鮮でチャージした僕らは、伊豆半島の東側、伊東市を目指した。
サドルの上で哲学する男、シムワークスXCレーシングのエビコ氏を訪問するためである。
小さな家庭菜園と、物置ピット。
日当たりの良いリビングで氏の子等とポケモンについて討論している、おもわず時間を忘れそうだ。
家を出た瞬間どちらを向いてもとにかく坂。
景色は良いが自転車向きではない。いや、逆か。これが彼のスタイルなのだ。この街が彼を強くしたのだ。
全くと言っていいほど平らな所がない土地の乗り物とは思えないギヤ比の愛車セブンで汗ひとつかかない。
禁酒のネタが少し前にブログにあったけれども、これがまだ続いていてすこぶる調子が良いとか。
ダムまで登ってきて「子供の頃あの向こうの沖合で海底爆発があったんです。でも明菜の自殺未遂事件で感心を奪われちゃって…」なんて楽しいおしゃべりを聞いていられたのはほんの序盤。
あとは氏の背中すら拝めませんでした。生意気こいてゴメンナサイ。
シムワークス田中はドッポの仕上がりの良さを噛み締めていた。
僕らがローカルのフレームビルダーShin服部製作所と共にこうして仕事をスタートできたのは実に恵まれたハナシ。
田中がNAHBSでマイク・デサルヴォと出会い、サークルズが、シムワークスが始まって、そのマイクにも師事した服部氏が仲間に加わってくれているのだ。
もうすぐ10年。
物事が薄まっていかないように注意深く手を動かし、言葉を紡ぎ、少しずつ積み上げてきた現在の僕たちの答え。
そのバイクを構成しているのが単なる部品ではなく、僕らの歴史そのものに見える。
僕は、田中の背中を追いながら、この坂はしんどいが、その先にはエビコ氏が、みんながいて、楽しい道じゃないかと思った。
おや、激坂は人をこんなにロマンチックにさせるものなのだろうか?
ありがとうございました。
締めは氏の行きつけの和食屋さん。
もうね、全部美味しいんですよ。感傷的なんじゃなくて、ホントに。
特にワカメ。
ワカメこんなに美味しいなら引っ越しても良いと思いましたね。
僕以外のシムワーカーも、それぞれが素晴らしい課題やヒントやあれやこれやを持ち帰ることのできたツアーだったと思います。
こうやって小さな原石みたいなのを持ち寄って、磨いて、散りばめてもっと輝いていきましょう。
長くなってしまいましたが久々のライドレポートはこれでおしまい。
タイトルはエビコ氏がちょっぴりハルキストだったから。
さて、次はどこで、どんな人と、どんな世界を垣間見れるのでしょうか?
楽しみでなりません。
写真・文/剣持