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2022/5/2

Mo の日本脱出大作戦 #00

All #35mm photos by Mo, words by Izuru

けいりんベルリンに集まるメッセンジャーたち

これから紹介するのは私たちの友人 Mo が昨年から始めた新しいトラベルプロジェクト、「日本脱出:エスケープ フロム ジャパン」である。 今回はその 1 回目なので彼の人となりや私たちとの関係などをまずは説明したい。

メッセンジャーの世界でその名を知らぬ者がない Mo こと Mortimer aka @keirinberlin は、2004 年から続けたベルリンのサイクルアンドカルチャーカフェ「けいりんベルリン」を 2018 年に閉めた。それからはずっとトラックバイクでの旅を続けている。けいりんベルリンはバイクショップでありながらギャラリースペースとカフェの設備をもったショップで、メッセンジャーのみならず多くのサイクリストが訪れるショップだった。旧東ベルリンに隣接していたクロイツベルグにあったが、再開発の波を受けての閉店だった。

20 歳でメッセンジャーを始めた Mo はベルリン、ブダペスト、ロンドン、トロント、ワンシントンDCでメッセンジャーとして過ごし、そしてニューヨークに来た。南北 20 km、東西 4 km の島の中に金融街もセントラルパークもハーレムもあって人もクルマも多いマンハッタンはメッセンジャーの独壇場。まだブロードバンドがなかった 90 年代から 00 年代は仕事も多かったし、ローカルのアーリーキャットレースや世界中からメッセンジャーが集う CMWC などのメッセンジャーカルチャーも大いに盛り上がっていた。彼らの、自転車乗りともストリートとも違う、他にはないスタイルを雑誌やテレビなどのメディアも喜んで取り上げた。そんなメッセンジャーの中でもどちらかというと控えめな、飾らない彼のスタイルは Peter Sutherland の名作ドキュメンタリーフィルム「PEDAL」で大きくフィーチャーされている。
”Yo Steve, it’s Mo” 伝説的なニューヨークのメッセンジャー Steve とのオーダーのやりとりから始まるパートだ。

Leo Power 1999 NYC

2003 年に #messlife をストップしてベルリンに戻り、翌年けいりんベルリンをオープンさせた。けいりんのウェブサイトは世界中のメッセンジャーがチェックしていたし、ショップにはメッセンジャーが待機していた。メッセンジャーの仕事が激減したり大きく様変わりしていく間もずっとメッセンジャーのカルチャーをサポート、発信し続けた。

2018 年、ベルリンから中央アジアを超えて日本へと至る 11 カ国、9500 km を旅した Mo はその後もう一度日本までのライドを決行した。(残念ながらその時は落車のため韓国でストップ)
そして今もその時と同じ Kocmo のチタンバイク(ジオメトリーは彼がメッセンジャーの仕事で使っていた Cannodale トラックと同じものをさらに35mm幅のタイヤが入るようにしてある)とテント、Moka ポット(イタリア Bialetti 社製のエスプレッソを抽出するポット:彼はコーヒー中毒だ)、を持って日本、そして東南アジアを旅している。

競輪のフレームを買い付けるためによく日本に来ていた Mo は 2007 年に Circles に立ち寄ってくれた。一緒に味噌煮込みうどんを食べに行った時、僕は少しだけ働いていたニューヨークのメッセンジャーカンパニー Elite Courier のスウェットを偶然着ていて、Mo も同じところで働いていたのでお互いびっくりしたのを覚えている。それ以来何度も名古屋に遊びにきている。SimWorks USA の Rie はヨーロッパ横断自転車旅行に行く前、ベルリン在住時に Mo のフラットに住んでいた。
名古屋に来るとデイジーメッセンジャーを拠点にあちこち走りに行く。クリティカルマスにも何度も来ている。小さいながらもユニークな自転車文化を持つ名古屋は Mo 曰く Most underrated city in Japan だそうだ。

Mo 2018 Nagoya (photo by Izuru)

世界は自転車で走っていけるように一つに繋がっていて、知りたいこと、見たい景色、会いたい人の元に行くためにペダルを漕ぐ。お金や地位には興味がないが人の不幸せを悲しみ、政治や権力には疑問を向ける。
彼のことを言葉で表すとすればこういうこと。それはまるでメッセンジャーか彼の父親の職業、ジャーナリストのようだ。

次のエントリーからは、彼の instagram や届いたメールからお送ります。今年に入りコロナウィルスのさらなる拡大やロシアのウクライナ侵攻があり Mo の旅も当初の予定とは全く違うものになっていますが彼は今日も走っています。

>>> #01 に続く