[Bike 伊豆 between you and me] Quoc Pham Tourerのその性能について
SimWorks XC Racingの始動よりもずっと前、去年の5月からQuoc PhamのTourerを履いてきました。 14か月間の使用でこのようなエイジングを見せてくれています。 その風格はゲイリー・オールドマンの表情のようでもあり、ジョニー・キャッシュの歌声のようでもあり。
去年の5月初め、確か王滝の2週間前に履き始めました。 このTourerを選んだ理由は言わずもがなのそのルックス。 性能については最新のレーススペックを持つ各社のハイエンドシューズに敵うわけはありません。
そもそもTourerですので、MTB競技向けですらありません。
しかしそのイカすルックスはぼくのやる気を奮い立たせるという意味ではこれ以上ないほどのレーススペックであり、人生を旅に例えるならぼくの人生においてはレースも旅の一部であると、得意である前向きな意味付けが発動しました。
履きこんで足に馴染んでいくことを想像するといてもたってもいられなくなり、王滝で履くつもりで、しかし足へのフィットが間に合わなければ王滝での使用は見送るつもりで取り寄せたのでした。
レース会場や初めてお会いする方とのトレイルライドなどでは、間違いなく100%の確率でそのシューズは自転車用なのかどうかを問われます。
ぼくはクリートをペダルに嵌める動作を見せます。
“素敵な遊び心ですね” という言葉を頂くこともありますがそれは違います。
遊び心では無く、大真面目に順位を一つでも上げるために履いています。
クールなルックスがやる気を奮い立たせます。
物理的性能ではなく情緒的性能を選んだだけなのです。
オシャレとは性能なのです。
〆にライドを控えているのなら、トレイル整備でも履くこともあります。
岩に当たり、土を被り、傷はこういう場面で増えていくのかもしれません。
物理的性能がまるでダメともとられかねない書き方をしてしまいましたが、そんなことはありません。
でも履き始めの最初の200kmはかなり我慢しました。
とにかく痛かったです。
逆に言えば200kmも走れば徐々にその性能が発揮され始められます。
アッパーはやはり使用に伴いどんどん伸びていくのがわかりますが、ヒールカップのホールド感は最初から常に一定で、浅過ぎず深過ぎず、シューレースを無理やりに締め上げてホールドするようなことも必要ありません。
今はインソールで解決できることも多いと聞きますし、結果このシューズはしっかりと使えるツールだと思っています。
また特筆したいことが一つあるのですがそれは歩きやすさです。
ソールが柔らかいわけではなく、むしろギアマッシャーであるぼくのペダリングにちゃんと合う硬さを持ち合わせているのですが、ソールの反りが絶妙なのです。
ぼくは競技をシングルスピードでこなすので担がなければならない場面が時々あります。 もちろんシクロクロスでも担ぎはあります。 多くの人が思いのほか現場で歩くわけなのです。 歩きやすさって意外と大事なのです。
晴天の王滝でも幾度となく沢を渡り、マウンテンバイクよりも田植え機のほうが速く進むであろうマッドコンディションに耐え、前輪が跳ね上げた石にも当たり、炎天下に滴るナトリウム濃度の高い汗を受け止め、ロガーブーツの代わりをさせられることもあり、そのたびにケアを繰り返してきました。
ケアするという喜びも大いに楽しんでいます。
今となってはバイクと同じくらい大切な相棒です。
ぼくは性能を重視するアマチュア競技者です。
text : Hiroki Ebiko / SimWorks XC Racing [Blog] [Instagram]