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2020/9/30

SyCip Designs: Life on a custom bike

Text & Photo By Toyoshige Ikeyama

少し時間が経ってしまいましたが、Circles でめでたくオーナーさんの元へと旅立っていったバイクのお話を。

色んな変化がある昨今ですが、自転車というファンツールと向き合っていく中で、やはり自転車が日常生活の移動手段として欠かせないものであること、そして、自転車に乗るという行為は、最も身近に自由を感じることができることなのだと、改めて思うんです。

新しい生活様式の中で、一人一人が正しく恐れて、きっちりとケアした上でライドを楽しむことができるはず。 そして、ライドには十人十色の楽しみ方があるから面白い。 それこそきっかけは人それぞれだと思いますが、日常・非日常という線引きをせずに、純粋にこの乗り物に乗るという行為をその人の生活の中にどんな形でも落とし込めるであれば、嬉しい限りであります。

さて、今回 Jeremy SyCip にお願いしたのは Java Boy、カスタムオーダーのコミューターバイクです。

買い物や日々の暮らしにおける移動手段として、そしてちょっとそこまで足を伸ばしてのサイクリングといった使い方をメインに、快適に乗り続けることのできる道具のような自転車にしたいというのがオーダーに際するリクエスト。

今まで、遠くへと足を伸ばしたり多少の悪路も気にせず走れるといった、「楽しむ」というベクトルで自転車と付き合ってきたオーナーさんが、ご自身の身体に合わせて作りたいと思ったのは、日常に特化したバイクです。

じっくりと相談を進め、どのようなバイクにしていくか決めていく上でまず一番最初に決めたのがホイールサイズでした。 乗り手の体格を考慮しながら、また街中を走る上での快適なタイヤサイズとして太めのサイズの選択肢が多い 650b をベースに考えることに。 小柄な方にとって扱いやすいこと、そしてバイク全体のバランスも綺麗に整うという部分も決め手でした。

日常的に使う自転車だからこそ欠かせないのが、ラックやフェンダー、そしてスタンド。 オーダー時にセンタースタンドやフェンダーが取り付けられるような台座も追加オプションとして依頼し、スマートにこれらの機能を落とし込むことが可能に。 余談ですが、フロントのフェンダーステーはサークルズメカニック・マコトによるお手製ベンドで、ディスクブレーキに干渉することなくフェンダーステーを配置しています。

過去の NAHBS のショーバイクを見ても、コミューターやカーゴバイクなどと言ったバイクを積極的に作っているジェレミー。 以前工房にお邪魔した時、カーゴバイクのラックのデザインを色々と試行錯誤しながらも、これだ!と閃いたアイデアをすぐにトーチを握って形にしていた姿が印象的で、彼にお願いするなら間違いないなと思っていたのです。

WALD バスケットをマウントし、買い物バッグをそのまま放り込めるような大きさ、そしてしっかりと買い込んだ荷物の重量にも耐えられるように設計され、専用のフロントフォークと合わせて無駄なくシンプルな取り付け方法は、流石の一言。

実際に荷物を載せて走らせても非常に安心感のあるハンドリングでしっかりとバイクが進んでくれます。 それはまるで魔法のような乗り心地なのですが、乗り手に合わせて作られるカスタムバイクだからこそ実現できるものなのです。


毎日乗るからこそ、しっかりと自分自身の身体にフィットし、そして自身の使い方マッチしたバイクに跨って走る。

先にも話した通り、自転車の楽しみ方は人ぞれぞれ。 速く走るもよし。ひたすら遠くを目指すもよし。 ライフスタイルの変化に伴って、その乗り方を変えてもまた生涯楽しめる乗り物だと思います。

その中で、カスタムオーダーという自分のための特別なバイクを、特別とは正反対の日々の暮らしの中でしっかりと使っていくっていうのも豊かだなと思うんです。

ジェレミーのアイデアと優しさが詰まったバイクは、オーナーとともに日々を力強く走り続けます。