[Bike 伊豆 between you and me] 完璧であるべきではない道具と、聖地の話。
妻とは気が合わない。
それもかなり。
今となってもぼくの心を奮い立たせる天空の城ラピュタを妻は「つまらない」と言う。
ぼくにとっては心の安らぎであるブルーグラスミュージックも、ポストロックも、リバースウィーブのパーカーも、明太子も彼女は嫌いである。
Jリーグでは、ぼくは清水エスパルスを応援し続けているのだけど、妻はジュビロ磐田が好き。
買い物に行き、空いてれば駐車場はどこだって構わないぼくと、建物の入り口のすぐそばの駐車場が空くまで待ちたい妻。
映画ではぼくは字幕、彼女は吹き替え。
そして自転車無くして生きてはいかれないぼくと、全ての自転車がこの世から消え去ったとしても気付くこともないであろう妻。
こんなにも気が合わない。
こんなにも気が合わないのだけど、それらのマターは結婚生活に支障を来すものではない。
と、ぼくは思っている。
まあ、それなりに楽しく暮らしています。
共通の趣味など一切ありませんが、お互いに幸せです。
結婚して8年になります。
結婚する前か後か、とにかく8年くらい前からぼくはスズキ・ジムニーを買いたいと事あるごとに言い続けてきました。
軽のくせに燃費が悪い車というイメージしか持たない妻を説き伏せることがまるで叶わず、ぼくの本意ではない車を乗り継いできましたが、先日ようやく妻から許可が下り、晴れてジムニーという奇跡を所有するに至りました。
夢は叶うのです。
しつこく唱え続けてさえいれば。
悪路走行においては国産車最高の性能を誇るジムニー。
ガソリン燃費についてはお世辞にも良いとは言えません。
我が妻の見解の通りです。
しかし見方を変えるとエコカーであるとも言えるのです。
現行のジムニーは1998年から2017年4月現在までのおよそ19年間に渡りモデルチェンジを行っていません。
その間、開発費や宣伝広告費が掛かっていません。
中古市場においては高値取引され、走行不可の故障車であっても値が付く可能性があります。
スクラップに掛けるコストとエネルギーを抑えられます。
ある意味においてはエコカーなのです。
(これについては妻に散々説明してきましたが、妻は理解することを拒否していました。そしてきっと今でも理解してくれてはいないはずです。)
そんなジムニーもいよいよモデルチェンジ間近の噂が飛び交っていますが、敢えてモデルチェンジ前の「現行」を購入しました。
19年前から変わっていないということは、今の時代に合っていないとも言えるのですが、ちょっとくらいの不便さが心地よく愛おしいのです。
自転車と同じなのです。
どこまで行っても不確かな人間の手や脚を必要とする道具としての健気さが、ジムニーと自転車に共通していると感じるのです。
何事も完璧であるべきではないのかもしれません。
幼稚さと本気さを理解して、それらと向かい合っていきたいものです。
ガソリン時代の最後の日までジムニーに乗り続けていたいと願っています。
またそれと同じくらいセブンサイクルズ・ソラSとも長く付き合っていきたいとも。
シムワークス理念との一致点をジムニーにも見出したような気がしました。
或いはぼくの都合の中でこじつけたとも言えるのかもしれませんが、あながち的外れではないと信じています。
自動車の話が長くなりましたが、電車の話も。
田舎での暮らしではやはり自動車での移動が多くなってしまい、電車に乗ることなど数年に一度。
しかし先日、電車に乗りました。
どうしても乗りたかったのです。
ちょうど自己紹介のポストをしたばかりのレイが伊豆に遊びに来た日です。
ぼくにとって最も身近な鉄道、伊豆急行。
伊豆急行がサイクルトレインの実証実験を始めました。(詳細はこちら。)
自転車を輪行袋に容れずに電車に乗せることが出来るのです。
ドキドキしながら自転車を電車内に載せます。
微かな背徳感を覚えるのですが、間違ったことはしていません。
これはサイクルトレインなのです。
起伏の多い土地なので、あらゆるサイクリストにおすすめ、とは言い切れない伊豆ツーリングですが、このサイクルトレインの登場で胸を張って言い切れるようになりました。
あらゆるサイクリストにとって伊豆は最高の土地です!
色々な旅のプランを練って、伊豆においでくださいませ。
9月にはRidin’Birdsも開催します。
この伊豆急行サイクルトレインのバックグラウンドに東京オリンピック・パラリンピックがあります。
東京オリンピック・パラリンピックの競技種目の内、自転車のトラックレースとマウンテンバイクは伊豆市のサイクルスポーツセンターでの開催が決定しています。
それに伴い伊豆半島全域で自転車フレンドリーな土地を目指し改革が起こり始めています。
修善寺から三島を結ぶ伊豆箱根鉄道でもサイクルトレインの本格運用を行っています。
東海バスの天城線ではサイクルラックを備えたバスが走っています。
また「思いやり1.5m運動」がスタートしています。
自動車が自転車を追い抜く際は、1.5mの間隔を空けてサイクリストの安全を守ろうという運動です。
所謂「走れる人」にとっては聖地であった伊豆ですが、今後はあらゆるサイクリストにとって、名ばかりではない聖地へと生まれ変わろうとしています。
願わくば地元住民の生活の足として自転車が根付かんことも。
かく言うぼくも通勤はジムニーですが、たまにはBike to workをしてみようかな。
早朝6時の峠越えかー・・・・。(遠い目。)
text : Hiroki Ebiko / SimWorks XC Racing [Blog] [Instagram]