[Bike 伊豆 between you and me] 海の声に耳を貸すな
Text by Hiroki Ebiko / Photo by Hiroki Ebiko
伊豆において海と山は隣り合わせである。
海岸から15kmで標高1000mに到達するルートもある。
これまでぼくの遊び場は山側にあった。
海に目もくれずに山へ向かい続けた理由はただそれが楽しかったからに他ならないのだけど、海岸から3kmの地点に暮らす伊豆んちゅが海で遊ぶ手段を持たないということは常に枷となってペダリングを妨げた。
ペダリングを妨げたというのは言い過ぎだが、仄かにコンプレックスとなっていたことは事実だ。
ぼくは元ダイバーだ。
ダイビングライセンスを取得したいと思った高校時代、費用を工面するためにダイビングセンターでアルバイトをし、業務の合間に教習を受け、ライセンス取得後は業務の合間に機材を借りて海へ潜った。
とにかく金が掛かる遊びである。
高校生がダイビングで遊ぶにはダイビングセンターでアルバイトをするという選択肢しかないのではないかと思う。
高校を卒業しアルバイトをやめてしまうと同時に海へ潜ることはなくなった。
そこでぼくの海遊びの遍歴は途絶えることになる。
今年の春、小学3年生の長男が釣りをやってみたいということでぼくは18年ぶりに海へ還ることとなった。
思いの外釣れてしまったことで、その日以来、潮見表をチェックすることが毎日の日課となっている。
自転車は手段として機能してこそ美しいと思っている。
毎日の通勤で自転車を走らせることが出来るなら良いのだけど、実現しない言い訳は100個程思い付く。
春に復活させたREW10 WORKSを釣りに行くときに活躍させることにした。
トップチューブに釣り竿を括り付け、峠道を駆け降りる。
これも手段としての機能である。
球体ペイントのパウダーペイントはタフな道具にこそ相応しい強靭な塗膜だ。
釣り竿を括り付けたところで塗膜割れは起きない。
パウダーペイントより強度としては劣るウレタンペイントに釣り竿を括り付けると恐らく傷が付いてしまう。
試しにトップチューブに装着したシリカ インペロ ウルティメート フレームポンプに釣り竿を括り付けてみた。
シリカ インペロ ウルティメート フレームポンプはストラップ無しにも関わらず、グラベルの下りでも外れてしまうことはない。
釣り竿を括り付けたとしても舗装路においては問題なくシートチューブとヘッドチューブの間で突っ張っている。
自転車で釣りに向かうなら、多くの釣り人を悩ませる駐車場問題から解放される。
好きなポイントで自転車を停め、魚と向き合うことが出来る。
どういう場面においても自転車というツールは優秀だ。
自転車とランニングと釣り。
主にこの3つが日々の楽しみとなっている。
準備に時間が掛からず、ふと思い立った時に30分あれば楽しめるということが共通点と言える。
計画的な行動が得意とは言えないぼくは、気軽な遊びが好きなのだ。
海が聞こえる。
自宅にいても波の音が聞こえるような気がするが、人はそれを幻聴と呼ぶ。
近頃の週末は、早朝のランニングで海の様子を見に行き、帰宅して朝食を摂った後に自転車で釣りへ向かうというのが習慣となっている。
text : Hiroki Ebiko / SimWorks XC Racing [Blog] [Instagram]