2021/1/16
令和 Bubbly 物語

SimWorks by MKS

MKS という強力な協力社を得たり SimWorks が、2021 年新春よりいよいよスタートを切りますのはそう皆様の足元、ペダルという部品の供給でございます。

始まりは2020年の春。満を持してのオファーに即答で頂いた快諾には、なんとしてでもクリーンヒットで返したい SimWorks 開発室。マイクラで培った3次元データ処理能力を駆使してこさえた最初のモックアップはこんな感じでした。

(この頃は秋にリリースなんてお伝えしてました。遅くなってスミマセン…)

脳内での設計は予め出来上がっていたと言っても良いでしょう。チーズおろしの様なデザインをくしゃみのスピードで書き出したファイルを送ると、3D プリンターで出力されたモックアップが秒で送られてきて(大げさ)たまげたものです。SimWorks のアイデアと、MKS の設計ノウハウが化学変化を起こして、イメージはすぐに具体的な「物体」となりました。

MKS 製品の高い品質については語るまでもなく歴史が証明しているのですが、十二宮殿に踏み込めばゴールドクロスの面々が待ち受けているように、数ある名品の向こうには敏腕手練のエンジニアの存在があるわけです。負けじとリフを刻むと、鋭いビートがバシバシ跳ね返ってくるのです。ファーストにしてベスト盤というのはこんな感じで生まれるのか!などと錯覚しつつ、ヘタウマと超絶技巧の掛け算はどこかコミカルに仕上げるべき…なんて設計を進めます。
とにかく、方向性はすぐに見出されたわけです。そして、この新しいコラボレーションが一体何を実現するべきなのかという問いの答えに向かって、一気に加速したのです!(興奮気味でスミマセン…)

レーザーでカットされたプロトタイプ

よく回る、だけじゃない

自転車を構成する要素の内ベアリングを有する回転部分は、ハブ、ヘッド、ボトムブラケット、そしてペダルのわずか4箇所です。そもそもがシンプルな構造の自転車において、どのパートも妥協するわけにはいきません。

Bubbly ペダルが採用するトリプルシールドベアリングは主に MKS ペダルの顔とも言える Sylvan シリーズの内、NEXT グレードのペダルで採用されている機構です。スピンドル、即ちペダル軸はライダーの体重を受け止める都合上、内側ほど太く充分な強度を持っていなければなりません。つまり必然的に内側のベアリング外形は大きくなりがちですが、トリプルシールドベアリングの機構ではこの内側のベアリングを2個に増やし、負荷を分散させつつ外形を抑えることで、ペダルのスタックハイト(軸中心から踏面までの厚み)を抑えるという工夫がなされている訳です。

画像:MKS 公式サイトより引用

熱したナイフがバターの塊に吸い込まれていくような…トリプルシールドベアリングが持つ素晴らしい回転性能についてのあれこれをここで語るのは野暮ですので、その辺りはご自身で体感していただきましょう。この場ではもう少しスタックハイト(軸中心から踏面までの厚み)について注目していきたいと思います。

穴だらけでも抜かりなし

ペダルには回転軸があり、この役割とは「動くものと動かされるものの同居」或いは「動かしたいものと動かないものの同居」を成立させることにあります。こうした相反する要素が両立している状態というのは言ってみれはとても「不安定」なのです。ものすごく良く回転するものに体重を乗せるんです。いかにも不安定ですが、これはグッと踏み込んで自転車を進める為には絶対に必要な不安定なんですね。
そんな不安定な世界の上にこそ、安住の地が必要なのです。

踏面が不安定なのは回転軸があるからですが、足は回転軸に近いほど安定します。綱渡りのような不安定なロープを歩み渡る場合を想像しても、靴はパズーの様に脱ぎ捨てるべきでしょう。不安定な場所では重心が低いほうが安定するという理屈にも共通した部分があります。スタックハイトを抑えた理由はここにあります。ペダルの上により安定した状況が実現していれば、それは効率を高め、疲労を軽減します。節約できたリソースはエンジョイに回すべきです。

踏面は MKS 製ペダルでは最大級の面積を誇ります。ポイントはその面積だけでなく、ソールにフィットするコンケーヴ形状にあります。
回転軸を中心にコンケーヴ、つまり凹型となるように設計された踏面は、前後方向には大胆に、横方向にもわずかなすり鉢状となっているのです。ここ、意識して足を置いてみてください。自分が一番踏みやすいと感じるポジションにスッと足が収まるはずです。しかも、そのポジションというのは路面やシューズやライディングの状況の変化に応じて微妙に変化するんですが、いつでもこの足の裏の収まりがすごく良くなります。
これには本当に驚きました。とても繊細なカーヴなんですが、MKS の設計力様々です。

ライダーが自転車とコンタクトするポイントはグリップ、サドル、ペダルのたった3箇所ですから、長時間のライドになればなるほどこれらの快適性能というのは妥協できない要素となります。Bubbly ペダルが提供する片足 10cm 四方の安住の地にたどり着いてしまえば、ライドの間はブリトーの具材選びに専念できる訳です。

チーズおろし

MKS 開発の鬼才舟山くんが興奮気味に尋ねてくれました。
「このランダムな穴がすごいです。どうしてこんなの思いつくんですか!?」
その場ではどうにかデザイナーらしいことを言わないと行けない気がしてついモゴモゴ御託を並べてしまいましたが、要は SimWorks は自分たちのインスピレーションを大事にしている、というだけの事です。クラスに一人はいた「おもろいやつ」に今でも憧れているんです。
いつ何時も、センスと言う名のアンテナを目一杯広げておいて、何かをキャッチしたらそれは大切にします。中にはインスピレーションってやつが混ざっていたりするもので…。

Bubbly ペダルは SimWorks と MKS の初めての共同作業。ビビッときたあなたは、なかなかのセンスの持ち主かと。

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