RIDE IS LIKE HAIKU vol.12
Text & Photo by Tomokuni Ohmura
今まで散々ライドをしてきて、それでもまだ地図を見るといつも気になる駅。 グーグルマップでもGARMIN(GPS付きサイクルコンピュータ)でも駅はあるのに道が無い、道は無いのに駅がある。
「実は隠れた道があるのでは?」…なぁんて、自転車馬鹿らしい発想をしながら、川の向こうに存在するであろう駅を思い浮かべる。
長野と静岡と愛知の県境にあるその駅は、秘境駅としてはある意味有名な駅らしい。 調べて行く内に、やはり車でのルートは皆無。 でも徒歩では行けるとの事、ならば自転車であれば行けるはずと思う我が思考。
とりあえず稲武をスタート地点として走り出す。スタートしてから目的地まで登りと降りのオンパレード。 兎に角目に迫るのは、山、山、山、、、、そして鮮やかな紅葉。
登坂のダンシングですこし汗ばんでくると、次に迫るは長い長い降り。 空気抵抗を少しでも小さくしようとフレームに身体を近づけて、右へ左へとカーブを降る。 降りで汗ばんだ身体が冷えた頃に、また登坂が始まる。
秋はやはり一番良い季節。暑さでバテる事も無いし、寒さで指先が痛くなる事も無い。 そして目に映る空は高く山は美しい。
幾つも峠を超えた頃に秘境駅の入り口。
『小和田駅』今回の目的地。
どうやら徒歩で43分もかかるらしい…。やはり秘境駅と呼ばれるからにはこれくらい当たり前なのだろうか? そもそも何故駅が作られたのだろうか? 色々と疑問が湧くものの、入り口に足を踏み入れる。
とりあえず先に結論を申し上げると、そこからの道のりは自転車は邪魔でしかなかった。
崩れ落ちそうな道。
歩くのも危険な急斜面。
駅までの道のりには不釣り合いな吊り橋。
自転車片手に担ぎと押しを何度も繰り返して前へと進むと見えてくる。
廃れた工場の奥に『小和田駅』の看板。
以前は通勤通学で利用している人もいたのであろうが、今では人一人存在しない。 秘境駅と呼ばれるせいか、たまに訪れるのは秘境好きに鉄道ファンぐらいなのか、駅舎の中には訪れた事を記すノート。 そんな駅を自転車を担いでくる馬鹿はどれ程いるのだろうか。
さて帰ろうかと思った頃に電車が近づいてくる音が聞こえてくる。
電車は停止する…
もちろん人が降りてくる気配は一切ない…
電車は過ぎ去り静寂が再び訪れる。
「一区間ぐらい輪行出来ればいいのになぁ…」
これから引き返さないといけない道のりが遠く思える。
『汽笛の音 身に入む旅の 始まりか』
それではまた次回。