2019/7/7
RIDE IS LIKE HAIKU vol.10

Text & Photo by Tomokuni Ohmura


あれよあれよとついに10回目の投稿を迎えたRIDE IS LIKE HAIKU、今回は記念回として少し長めでお付き合いくださいませ。


2019 07 01

月日は百代の過客にして、行き交う年も旅人なり。
有名な奥の細道の冒頭。

旅こそが人生であり、人生は旅である。
衝動的に何処か知らない土地へ行きたくなる。

そう言えば初めて自転車で遠出したのはいつの事だろう。

小学生の頃に隣の学区に引っ越した友人の家へ、仲間と共に自転車で遊びに行った事だったろうか。ほんの10キロ少々の移動が何時もと違った景色が新鮮を見せてくれた、幼い子供にとって少しばかりの冒険。

あれから数十年が経過し、進学、就職を経て、社会の歯車となると同時に、サークルズに通うようになって、自転車はより身近な乗り物になった。

もし自分自身が今より若くて、社会とか責任とかがない身分であれば、きっと旅に出かけていることだろう。

ただ芭蕉と違う点と言えば、自転車に乗って旅に出たい。

近頃は声高に働き方改革なんぞと叫ばれ、僕が勝手にブラック企業と呼んでいた我が社にも、平日に休日を取る事が当たり前になってきた。 会社の稼働日に、まさか休みなんて… とはいえ休日が増える事は、喜ばしい事意外何もない。

と言いつつ勝手気ままに休日を取る事の出来ぬ、社会の歯車として働きだして十年を越えた我が身。でも何とか休むようにやりくりし、敢えて日曜日や祝日を絡めて連休を頂く。

もちろん自転車で旅に出る為に。

そんなわけで見た事のない景色を求め、相棒には普段より大きなサドルバックを付けてペダルを漕ぎだす。 自転車乗りの性癖か、敢えて登りの多い長野へとハンドルを向ける。

今回は一泊二日の工程。 僕のスタイルはキャンプを前提にしたバイクパッキングではなく、その土地の旅館やホテルで一泊するスタイル。 当然荷物は最小限。おかげさまでご覧の通りサドルバックのみ。

荷物は少ないおかげで、いつものとおりダンシングで坂を駆け上がる事が出来る。 もくもくとペダルを漕いで山の中へと向かう。 山の景色は身近に迫り、見知らぬ景色に心踊る。ダンシングで駆け上がる事がどんどん楽しくなる。

予約していた旅館に到着、山奥にあるのに、塩辛い不思議な温泉宿。

宿の主人から、「お疲れ様でした、どちらからいらしたのですか?」とお約束の質問。 「名古屋から来ました」って言うと、やっぱり驚かれる。 なんと言っても、名古屋から200キロぐらいあるのだから。

談笑はそこそこに、温泉に浸かり食事を頂く。 心地好い疲労と共に、久しぶりの畳の上の布団で何時もより少し早い就寝。 明日のライドが楽しみでしょうがない。 身体をしっかりと休めなければ、まだ走った事のない道と景色が待っているのだから…。

翌日目を覚ますと、昨日よりも美しい晴天。 山の空は都会よりも鮮やかに見えるのは気のせいだろうか。 そう言えば今日が月曜日な事を思い出す。

こんな山奥で平日の朝を迎える事が不思議に感じる。
朝食を頂き着替えて旅館を後にする。

「ありがとうございます。お気をつけていってらっしゃいませ。」

さあ見知らぬ道を走り出す昨日
よりも山が身近に迫る

すれ違う車は少ない
すれ違う自転車はない

川のせせらぎが聞こえる
鳥のさえずりが聞こえる

目前に迫るのは山と道
見知らぬ景色に心踊る

幾つも峠を越えた先にある空には入道雲

だからライドはやめられない

道すがら見つけたお店で昼食。自転車に乗る格好をした僕を見て、昨日と同じ質問をされる。「名古屋から来ました」って言うと、やっぱり驚かれる。 そんなに無理して走っている訳ではないのだけども。

いくつもの峠を越えて、山の合間から諏訪湖が見える。 もっと遠くに行きたいけども、今回のライドはここまで。

さてぼちぼち輪行で帰るとしますか…。
今度は何処からスタートして、どこまで走ろうか?
既に次回の連休で、何処に行こうかと思案しながら家路につく。

『坂を駆け見上げた空に入道雲』




それではまた次回。

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