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2021/2/23

Rangefinder

Mystic Projects – Rangefinder Book
¥5,800(税抜)

Sklar Bikes の Adam、Madrean Fabrication の Hubert の二人のフレームビルダーと、ペインターである Cicli Pucci の Jonathan によるコラボレートプロジェクト Rangefinder / レンジファインダー 。

今回リリースされたフォトブックは、2019 年から2020 年にかけての冬に、Arizona 州 Tucson にある Madrean の工房に彼らが集い、お互いの日々の製作とは異なった形でのコラボレートとなるフレーム製作の様子をドキュメントしています。


フレームビルディングは伝統的に一人の手によって行われてきたイメージが強いかもしれませんが、それは決して孤独な作業ではありませんでした。

確かに、自転車のフレームをハンドメイドで生み出すというプロセスは、多くの場合設計から部材の加工、そして溶接、仕上げまでを行う一個人がその小さな工房で独自の技術を駆使しモノづくりを行っていますが、それらを取り巻くコミュニティや文化は競争ではなく、むしろ共同作業だと言えます。

各世代のビルダーが同業者や先人のアイデアやデザインを継承し、それを発展させて現代の自転車を作り上げてきたことが、現在の自転車のデザインの礎を作ったと言えます。ここではそれを共同進化と呼ぶことにしましょう。

初期のフランスのコンストラクターからアメリカの開拓者に至るまで、古くからの保守的な人々はこの共同進化の伝統を確立してきましたが、それはフレームビルダーのプロセスと創造的な成長の重要な要素であり、常にそうであり続けてきました。

その仲間意識の精神のもと、二人の新世代を担うフレームビルダーである Adam Sklar と Hubert D’Autremont が手を取り、お互いの利益など度外視にした環境を楽しみながらお互いに学び、プロとしての実践を定義し、創造的なプロセスを磨くための情報を共有するべく、冬の Tucson に集ったのです。

どちらのビルダーもほぼ同じスキルを持っていますが、彼らの作品にはそれぞれの特異性があります。Hubert はモノづくりの上での過程を重視する傾向があり、Adam は生産性を重視する傾向があります。二人とも機能を優先してデザインしていますが、Hubert のそれは伝統的なフレームの形に、Adam は彫刻的で有機的なラインに傾いています。

彼らの目標は、商業や市場性にとらわれず、ユニークなものを一緒に作り上げること、そして気の合う仲間と一緒に楽しむことでした。この頃のツーソンは、今回のフレームのペイントを担当した Jonny Pucci や、広大な Sonora の砂漠のダブルトラックをクルージングしに来た他の仲間たちが毎日太陽を追いかけるように走り回る最高の拠点となり、そこはまさに仕事と遊びの境界線が蜃気楼のように完全に溶解した場所となったのでした。

Rangefinder というコラボレーションの意図は、アイデアを共有し、共通の基盤を見つけ、孤独な作業を共有の作業に変え、作業を遊びに変えることでした。自転車は、目的を持って移動したり、逆にあてもなく探索したりすることができるように、機能と楽しさの両方を追求して設計されているからです。もしそれが楽しくないのなら、わざわざそんな事をしませんよね?

レンジファインダーとは、観測者とターゲットの距離を測るための装置です。アダムとヒューバートは二人ともアナログ写真が好きで、また自転車は山道を見つけるのに使われる装置でもあることから、今回のコラボレーションは Rangefinder と名付けられました。しかし、この言葉には、誰が観測者で、誰がターゲットなのか?という興味深く意外な意味も含まれています。

ここで探求されているレンジ = 範囲というは、二人のビルダーの間にある創造的な場所であり、自由な発想と協力的な相互の心の拡張の範囲であり、それが今回の二人の合作によるハンドメイドフレームを生み出し、他の人たちに自分たちの協力的な範囲を探求するためのインスピレーションを与えています。

あなたもこのフォトブックに掲載されている作品や遊びからインスピレーションを得て、自分の作品を探しに出かけることを願っています。楽しんでください!