[Bike 伊豆 between you and me] アロエの花咲く頃に。
キダチアロエの名産地として名高い伊豆。
朱色の花は、花火の炸裂の瞬間を切り取ったかのようにヴィヴィッドでエモーショナルです。
キダチアロエの開花に冬の到来と年の瀬を覚えます。
暦が12月になったというよりも、ぼくらが12月という時空に猛スピードで突入し過ぎていくと言うのが相応しくもあるかのようで、事実、11月末からの2週間は簡単には形容できないほど濃密なものでありました。
2週間のダイジェストと、そしてこの機会にとても特別な2台の自転車に乗らせていただきましたので、ここにその感動と喜びを記します。
先の24時間レースの疲労も全くと言っていいほど抜けぬまま、聖地名古屋巡礼。
Circles 10周年記念パーティー出席、そして滅多にない機会なのでHunter CyclesのRoad Plus Gravel Grinderを拝借して瀬戸方面へのグループライドに参加させていただきました。
ドロップハンドル、変速、650Bと普段乗っているSolaとは共通する部分がほとんどないバイクでドキドキハラハラのショートトリップ。
転がるというよりも滑空。
砂漠の王国アグラバーを駆け抜ける魔法の絨毯にも似た走行感。
ステアリングはMTBのそれに近く、とても頼もしい。
そんなHunter CyclesのRick Hunterが来日中でありました。
彼自身はトレイルを徹底的に楽しむためのFunduroフルサスペンションバイクを持ち込んでいました。
とにかくそのサイズの大きさと言ったら。
ドロッパーポストのリモコンを操作してサドルを上限まで勢いよく上げると、切れ味鋭いアッパーカットが顎を目がけて飛んでくるかのような、そんなサドルの高さなのです。
RickはBBと同軸のピボットを持つフルサスペンションバイクを好んで作る印象があります。
理由を尋ねたところ、作り易いからだそうで。
BB同軸ピボットはリアセンターが常に一定なのでチェーントラブルを回避しやすく、リアエンドを可変式にすればシングルスピード化が出来るというメリットがある反面、ボビングが大きくペダリングロスが欠点となってしまうのでXCレースには不向きではあります。
ある程度はリアショックの性能で補うことが可能ではありますが。
とても興味深いものを見ることが出来ました。
サイズさえ何とかなればちゃんと乗ってみたかったところであります。
Hunter Cyclesは現在バックオーダー過多につき受注を停止させていただいておりますので、ご了承下さい。
そしてSim WorkersやRick Hunterが西伊豆の山伏トレイルツアーに参加するということでぼくも同行させていただきました。
(以前こちらで山伏トレイルツアーについて紹介させて頂いたエントリーも併せてお読みください。)
Sim Worker 剣持氏の「自走でトレイルヘッドまで登りたい」の言葉に半数以上のクルーが同調。
登りが速いとか遅いとか、好きとか嫌いとかは関係なく、ひとえに楽しみたいという願いの元、自走組の全員が自力で登頂。
長い登坂の道中でも、後悔の念は一人も抱きませんでした。(そのはずです。)
トレイルガイドによる搬送は、少しでも長い時間トレイルライドを楽しんでいただきたいというおもてなし精神の表れであり、やはりガイドツアーには必要不可欠なものであると思いますが、自走で駆け上がってこそ感じうる現実性に気づきました。
スキーやスノーボードのゲレンデスポーツにあるような、まずはフィールドへ赴かなければならないという特殊性が薄れる気がするのです。
自走でトレイルへ向かうことでマウンテンバイクが気軽なものと思えるような気がしました。
マウンテンバイクにおけるフィールドとはこの世界全てなのです。
想像力が世界をより良いものにするのでしょう。
冬季は駿河湾から強く風が吹き付ける日が多い西伊豆ですが、この日は奇跡的に無風。
山の木々は邪気を寄せ付けぬ結界であるかのようで、何物も僕らの行く手を阻むことはできませんでした。
僕らの笑い声とタイヤが落ち葉を舞い上げる音が山の空気を揺らしました。
海からの風は吹きませんでしたが、木々の間をすり抜けて駆ける風になったのは僕達でした。
至高のトレイルライドを終え、僕のSeven Cycles Sola Sはオーバーホールで徹底的に膿を出して頂くべく名古屋に連れ帰って頂き、代車としてRetrotec Twin Top Tubeを拝借しました。
650Bタイヤ、140mmトラベルのサスペンション、そして変速。
やはりSolaとは大きく違いのある一台です。
まだしっかりと乗り込んでいないのですが、Twin Top Tubeは経験のないほどの素晴らしい乗り心地です。
チタンのSola Sよりも減衰性が高いのではないでしょうか。
いつもと違うバイクに跨ると、いつもの場所へ行きたくなるものです。
果たしてこのRetrotecを駆るぼくは一体どんなことが出来るのだろう、イメージの中でのぼくはインビンシブルです。
尽き果てるまで遊んだ2週間でありましたが、そろそろ家族の顔を窺いながら慎重に動かないとまずいことになります。
けれど2016年に悔いは残せません。
1時間あれば楽しめる土地に暮らしています。
まだ構えを解くわけにはいきませんね。
僕は隙を逃しません。
そして年末と言えば毎年恒例のあれ。
Sim Workerモンジャ氏曰く、「伊豆には全てがある」。
今年はほんとに名古屋からの来伊豆が多く、嬉しい限りです。
2016年、最後の最後まで楽しみましょう。
text : Hiroki Ebiko / SimWorks XC Racing [Blog] [Instagram]