For your safety: タイヤの暴発を防ごう
近年ポピュラーなってきたチューブレスレディ、チューブレスコンバーチブルのタイヤですが、普及に伴って「チューブレスタイヤの暴発問題」というものが私達を悩ませるようになりました。
チューブレスタイヤの暴発は、リムがタイヤを保持する限界を超えた際、大きな破裂音とともにタイヤがリムから外れてしまう現象を言います。ポンプなどで空気を入れている最中に発生することもあれば、乗車中に起こることもあり、後者の場合は転倒などの深刻な事故につながる恐れもある危険な現象です。
私達 SimWorks は、Panaracer 社と共同開発したチューブレスコンパーチブルのタイヤを販売しておりますから、この問題についての問い合わせ、クレームがお客様より寄せられることがあります。そしてメーカーである Panaracer 社にもやはり同じ様な問題が多く持ちかけられると聞いています。
また、他社のタイヤメーカーのブログ等にも、チューブレスの利点とともに問題点や注意点を喚起する記事が見受けられたりと、業界内、特にタイヤの販売に携わる人にとって実に悩ましい問題となっています。そしてこの自転車のチューブレス仕様が抱えている問題は、とても根が深いということも徐々にわかってきました。
タイヤとリムの”相性”でチューブレスタイヤの暴発が起こる
まず暴発が起こったときには、タイヤに何かしらの欠陥が有ったに違いないと判断されがちです。しかし、このチューブレスタイヤの暴発にまつわる根本的な問題とはいわゆる「相性」の側面がとても大きいことがわかってきました。
相性が問題ですから、タイヤが悪いのでもリムが悪いのでもなく、それらの組み合わせが悪いのです。リムとタイヤのどちらもがチューブレスの対応を謳っていてもこのトラブルは起きています。
そしてこの根本をたどると、原因は自転車産業が自身の力でそのチューブレスタイヤの標準規格を定義しきれていないことにあることが見えてきました。ですから、まず現状においてユーザーがなすべき最初の対策とは「理解すること」にあると考えています。
なぜそんな相性の問題があるのか
標準規格が定義されていない点について詳述します。
自転車のタイヤやリムの構造や形状について、大きく分けて2つの標準が存在します。ISO(国際標準化機構)と ETRTO(ヨーロッパ タイヤ リム技術機構)が定めている規格です。
自転車の部品はこうした規格に基づいて設計/製造されていますから、異なるメーカーの部品同士を組み合わせた場合であっても問題なく使えるようになっています。その為の世界標準ですね。
しかし、ことチューブレスタイヤについては、長い間この標準規格が存在しませんでした。(ETRTO は今年に入りチューブレスリムの標準規格を策定しネクストタームに入った、つまりは ISO に次のボールが渡されたという状態にようやくなったということなのですが…。)
しかしながら長らく標準規格化が成されなかったその市場ではどういうことが起きているかといいますと、タイヤもリムも各社が独自に開発設計し、独自の試験をして、それらの製品がチューブレス対応商品であると謳っているということです。ユーザーからしてみれば、リムとタイヤのどちらもがチューブレス可とあれば、組み合わせて使えるように思うもの無理はありません。これが暴発事故の原因と、私達は考えています。そしてこの現況を理解すること、ユーザーが学び、自らが賢くなる他に対策がないと思うのです。
SimWorks がタイヤの製造をお願いしている Panaracer 社では、ISO のチューブタイヤ用の規格に基づいてタイヤを製造しており、同じく ISO の基準を満たす構造のリムとの組み合わせに於いては、これをチューブレス仕様として使用できる(=チューブレスコンバーチブル)としています。 上述の通り ISO にはチューブレスタイヤ用の基準が未だに存在しないため、チューブを使用した自転車用タイヤ(チューブド)の基準に沿って製造している、というのが現状です。
参考までに、下記が Panaracer 製の SimWorks タイヤと推奨リムの組み合わせについての表です。
ISO規格から外れた構造のリムは暴発しやすい
タイヤが暴発した、外れてしまった等の連絡をもらうと私達はどんなリムを使用していたかを必ず確認します。そして、そのほとんどすべてが上記の構造をしていない、つまりISO規格から外れた構造のリムを使用したケースが目立ちます。
実際、特にチューブレス仕様を謳ったリムには ISO 規格外の構造のものが多く流通しています。そして、こうした事実はユーザーだけでなく、バイクショップですら把握しきれていないことが往々にしてあることもわかってきました。
チューブレスのメリットとデメリットを理解する
チューブレス対応のリムは、ビードフックが無い(フックレス)もしくは小さいなど独特な構造をしていることがありますが、サイドウォール(上図のG高)が低いリムは特に注意が必要です。私達に寄せられた暴発事案で使用されていたリムは皆サイドウォールの低いものばかりでした。
メーカーはチューブレスの、特に低圧での乗車時のリム打ちリスク低減のためにサイドウォールを低く設計することがあり、確かにメリットもありますが、タイヤの選択によってはメーカーが定めた最高空気圧に達する前に暴発してタイヤが外れてしまったり、走行中に外れてしまうという事案が起きています。
そしてチューブレスでの運用をしてみたいなと思い初めたユーザーは、図の基準値を意識していただきながら適切なリムの選択をしてください。 そしてこれから何度もいいますが、決してタイヤ側面に記載されている最大気圧以上のエアーを注入しないように努めてください。(非常に大切なので必ず覚えておいてください、またタイヤによってはタイヤサイドに書かれた適正圧がチューブ使用時のものも数多くあります。)
また現在製造されているチューブレス対応リムは ISO 標準規格に適合させて製造されていないもの多く、フックレスリムなどはその代表と言えるでしょう。しかし、規格に囚われない先進的な設計のフックレスリムには多くの利点があることも事実です。ただ、その安全な運用には正しい知識で正しく部品を構成することが重要ということです。
このような案件を積み重ねて書き示してみると、非常に大切な安全標準基準値を世界的に規格化できていないということ自体がこの自転車産業の完全なるミステイクだとやはり思ってしまうのですが、不満を言っても始まりませんので、まずは正しくチューブレスタイヤというものとその扱い方をしっかりと理解し、みんなで情報を共有しあっていくことが一番安心してチューブレスタイヤを使用するための近道なのかもしれません。もしくはチューブドでの運用は古典的ではありますが、一番安心してどのようなタイヤでも確実に運用できる方法と割り切って考えるのも良いでしょう。
チューブレスタイヤ暴発問題のまとめ
ユーザー、バイクショップが適切な知識を身につける以外にこうしたタイヤの暴発などのトラブル、またはそれに起因する事故を防ぐ手立ては現在なさそうです。再度皆さんに理解しておいてほしいことを下記に示しておきますのでチューブレスタイヤの運用をお考えの皆様はしっかりと覚えていただき安全を自己担保していきましょう。
- SimWorks のタイヤを製造している Panaracer 社は ISO の基準値に基づいてタイヤを設計、製造している
- Panaracer 社が適合とする寸法から外れた設計/形状のリムが数多くある
(タイヤの暴発が起こるとタイヤの欠陥があると判断されがちですが、実際はそうではないということ) - 組み合わせによってはタイヤが外れる可能性があり、それは危険である
(正しくものと扱いを知り、知らなければ知識のある人に正解を納得するまで尋ねること) - 適正空気圧を正しく知り、決して最大空気圧以上の空気を注入しない
(適正の空気圧は必ずタイヤサイドに記載されているのでしっかりと確認する。また正しい数字がわからない場合は必ず製造メーカーに尋ねること) - タイヤ暴発の危険から自身を守るためには適切な知識が必要であ
(趣味の世界なのでレース機材、自己責任という言葉が安易に存在してしまっているということ)
繰り返すことになりますが、現状のチューブレスレディならびにコンバチブルというのは、その道の上級者が知恵と工夫を繰り返し、なんとか実用できるところにまでになってきてくれているとは思います。「時代はチューブレス」と謳いたくなる気持ちもわかりますが、コミュニティの安全の為に定められるべき標準規格の設定は未だに追いついていないのが実情だと思います。チューブレスタイヤの運用をお考えの方は、正しいリムとタイヤの組み合わせを選びに、適正空気圧をしっかりと守ってご使用ください。
SimWorks からのお願いでした。
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