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2023/2/6

A Portrait of an Artist as a Young Man.

Story: Steven Smith and Keaton Haire.
Photos: from a bevy of shutter bugs.

ここでは、SimWorks と Doom Bars の特別なコラボレーションハンドルバー “High Plain Drifter Bar” が生まれた物語を、綴っていきたいと思います。

Doppo – High Plains Drifter のコンセプトを最初に立ち上げたとき、私はこのプロジェクトの意義や SimWorks が伝えたいメッセージをフレームワークにどう落とし込めるかに意識を集中させていました。グッド・ヴァイブスや美意識を共有するデザイナーやメーカーが集まり、その情熱とスキルの集大成にしたかったのです。

私はそこから「歴史」を感じさせることを意識的に狙っていました。それはこのプロジェクトに携わるチームの皆にとってのテーマであり、素材やライン、ジオメトリーなどの要素を符合させ、歴史的なアイコンとして表現されています。それらは広大な自然を駆け巡るために生み出されたオフロードバイクの歴史と、そこに秘められた暗黙のキーワードを想起させてくれるはずです。そしてそれらは、私達がクールだとかトレンドだとか思っている今より遥か40年も前に、当時のビルダーやライダーによって言葉なしに語られ、そしてすでに完成されたものだったからです。

つまりこのプロジェクトは、オフロードライディングへの愛と、敬愛している先人たちやフィールド、バイクに対する理想や感謝、憧れを共有できるすべての人たちと一緒になって、こうしたバイクや関連するコンポーネント、アクセサリーを作りたいという強い思いから生まれました。そしてそんなシンパシーとともにアメリカでの MTB 黎明期の影響を折込みながら、同時にモダンな機能を盛り込んだバイクを作り上げることだったのです。

私の辿ってきた路に話を戻すと、始まりの地とでも言うべき 2000年代中頃、コロラド州 Fort Collins にある一軒の自転車店 “Brave New Wheel” に行き着くことになります。このバイクショップには貧乏学生、シングルスピード狂、ビンテージ 3段変速マニア、レストア愛好家、パスハンター、ジャンクパーツを漁るのが趣味の人、ランドナーの人たちからシングルトラックを攻めるのに夢中の人たちまで、多種多様でエキセントリックな人々が通い詰め、ライドコミュニティのハブでもあり、自転車のあらゆる事実が集う憩いの店でした。A & M スクールにてリベラルアーツの学位を取得して、残りの人生をどうしてやろうかと悩んでいる間の生計を立てるのに、ここ以上の場所は思いつきませんでした。私は毎晩の様に PhilWood のグリス、パーツクリーナー、JB 接着剤の臭いを漂わせて家に帰っていたのを覚えています。そのショップでバイクのあらゆる修理スキルを身に着けながら、永遠に尊敬をしあい、感謝できる一握りの仲間との出会いを含め、人生における幾つかの素晴らしい瞬間を過ごしました。その最も重要な学びとは、およそバイクに関するプロダクトというものは実によく考えられ、そして作られていて、意図が明確で、時代を超越するスタイル、耐久性、サービス性や機能が兼ね備えられているのだという真実を真に理解できたことです。そこで私は自転車を、豊かな人生の為の触媒、健康で効果的なアウトプット、探検の道具、効率的な移動手段、そしてインダストリアルアートの純粋な表現物と位置づけるようになったのです。更に、仕事に適した道具を正しく使うこと、自分の手を大切にケアすることも同時に学びました。これは、あらゆるカテゴリーの創作活動で成功するための基礎となるものです。

2008年か2009年のこと、その店で私は Keaton Haire と出会いました。ちょうど私が人生の次のステップをどんな風に踏み出すかを考えていたときです。好奇心旺盛で思慮深い彼は、時々店に顔を出してはバイクの話をしたり最近のライドのイラストや出来事などを持ち込んで来たのでした。そして恐らく Keaton は、自転車を自分の人生にとっての特別なものにしようと模索していたのでしょう。その6年後、Keaton と再開した私は Chris King社で働く仲間となり、運命が重なりあうことになりました。そして更に 5 年後、私は長い間夢に思い描いていたオリジナルな BMX / Klunker スタイルバイクに、CrMoチューブを彼に曲げてもらい、溶接し、ハンドルバーの製造を彼にしてもらうことになることは、本当に思いがけないことでした。私にはこれが、コロラド州 Fort Collins に始まった、なんとも数奇な物語に感じます。しかし、このようなことは毎日世界の街角で起こっています。人生のあらゆる局面で、アイデアが情熱と出会い、スパークを散らすのです。メールが書かれたり、電話がまた鳴り出します。トーチに火が灯されます。その繰り返し…。

私はこの “High Plain Drifter” を昨年デビューさせ、その夢を実現することができた事をとても誇りに思うと同時に感謝の気持ちで一杯です。その体験がより貴重で有意義なものになったのは、そのビジョンを造り手と共有し、実現するためのその技術や必要とされる視点にもアクセスできたからです。

先週は Keaton に連絡して、新年の挨拶をし、今後について話をしました。彼がどこから来て、今何をしているか。そんなスケッチをお願いしたのです。やはり、それはバイクに対する愛の物語でした。

From Keaton: 私は、物心ついたときから自転車が大好きでした。子供の頃は毎日の様に、友人たちと BMX バイクを乗り回して過ごしました。12歳のときには例えそれがシングルスピードだったとしても、自転車というものが長距離を移動できる道具であることを理解できました。

私はコロラド州 Fort Collins で育ち、高校時代には友人の Todd Heath が、地元のフレームビルダー Black Sheep Bikes の James Bleakley と付き合うようになりました。Todd は James と何年も仕事をし、やがて別れて Moonmen Bikes を立ち上げました。私は James と一緒に仕事をしたことはありませんが、若い頃から美しいハンドビルドの自転車に携わっていたことが印象に残っています。James は長年にわたって多くのビルダーを生み出し、彼の影響なしには私はこうして仕事をすることはできなかったでしょう。

私は大学で彫刻と美術を学び、自転車整備士のアルバイトを始めました。所有する自転車の台数はどんどん増え、手に入れたマウンテンバイクでトレイルを走るようになりました。日本製の古い Schwinn Le Tour をシングルスピードのコミューターバイクとして組み立て、長い距離を走るようにもなりました。

大学で彫刻を勉強しているときに、初めてロウ付けと「芸術的な溶接」をしたのです。美しいフィレットやティグ溶接には程遠いものでしたが、とにかくそれがスタートでした。

大学を卒業すると各地を転々としながら、バイクメカニックとして働き続けました。そして 2012年に初めてバイクフレームを制作しました。フィレット仕上げの 29″ BMX クルーザーです。何年もの間、アマチュアビルダーとして幾つものフレームを制作しましたが、当時はプロとしてフレームビルダーをビジネスにすることを、なかなか現実的とは思えませんでした。

2015年、Chris King 社で働くために、オレゴン州 Portland に引っ越しました。最初は仕上げ作業といくつかの基本的なマシンを動かすことから始め、1年後にはハブシェルを加工する CNC 旋盤を動かしていました。初めてハンドルバーを曲げたのも、この Portland という街でした。

Terracycle のオーナー、Patrick Franz の好意で、同社のチューブベンダーを使わせてもらい、自分のスポーツツーリング / グラベルバイク用に、細身でシュッとしたマスタッシュバーを曲げました。それからハンドルバーのジオメトリーを考えるのに夢中になり、何本も何本も終わりを知ることもなく曲げ続けていました。ハンドルバーをデザインし、特定のデザインを実現するために必要な曲げを計算するというチャレンジに夢中になってしまったのです。

DOOM BARS は、私がパンデミック中の2020年に正式にスタートさせたハンドルバーのブランドです。Covid によってすべてが閉鎖された当時、私は美術用印刷機を製造する Takach Press で溶接工として働いていました。そしてシャットダウンが始まった翌日、中古のチューブベンダーを偶然見つけて、バーを曲げ始めました。DOOM BARS はもうすぐ3年になりますが、これまでに 300本のユニークなバーと、何百本ものお気に入りのレプリカを作りました。

例えば、The Legal Drinker バーは、アメリカでお酒が飲めるようになる年齢(21歳)と21度のバックスイープにちなんで名付けました。それは Terracycle で最初に曲げたバーを、経験によってより洗練させたものです。15mm のライズと前方に少しバンプした浅いマスタッシュバーの Legal Drinker は、初期のロードバイクやトラックバイクに見られるクラシックなスタイルへのオマージュですが、バーのライズをあまり必要としない、あらゆるタイプのバイクにぴったりだと思っています。

そして High Plains Drifter バーは、BMX / Klunker スタイルのバーをモダンに改良し、量産に取り組む絶好の機会でした。私は様々なライズやスイープを持つ膨大な種類の BMX スタイルのバーを作ってきていたのですが、SimWorks と連携することで、非常にバランスの取れたデザインに仕上げることができたと思っています。どんなバイクでも快適に乗れる十分なライズとスイープを持ちながら、アグレッシブなライドも可能なのです。

現在、DOOM BARS のビジネスの約半分はカスタムオーダーです。理想の高いカスタマーと一緒になって夢のハンドルバーを作ることは常に素晴らしいことですが、今は小ロットでの量産体制への移行にフォーカスをしており、ウェブサイトを通じて様々なプロダクションモデルを入手できるように努めています。現在、1日に約1本のハンドルバーをなんとか販売できていますが、量的にはカスタムオーダーの管理が限界にきているのが現状です。カスタムオーダーのハンドルバーは、これからも受注できるようにしたいと考えていますが、量産体制に移行することで、私たちが気に入っているデザインへと生産を集中し、それがより多くの人々のライドの充実への貢献になると考えているからです。

そして SimWorks は新たなページをめくり、DOOM BARSとの次の展開、Keaton との新しい仕事を楽しみにしています。その間に、High Plains Drifter バーの 2nd バッチを皆様に提供できることを嬉しく思いってますし、今後も作り続けられる名作のハンドルバーになってくれることを願っています。

この High Plains Drifter バーは、バランスが良くニュートラルなハンドリング感覚が素晴らしいです。ライズとバックスイープはカジュアルなクルーザータイプでありながら、アグレッシブなライディングをも完璧にこなします。舌の肥えたライダーの駆るオフロードエクスプローラーに取り付けることを目的に設計され、ビードブラストとニッケルメッキで仕上げられた、芸術的で機能性の高い自転車パーツが生まれたというわけです。

SimWorks x DOOM ‘High Plains Drifter’ Bar

800mm wide / 80mm rise / 13° backsweep / 4° upsweep

Chromoly / Nickel plated / Bead blasted

Bar center: 22.2mm clamp area / 31.8mm アルミシム付属
¥39,600