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2014/4/7
-Monday Selection- NAHBS Days

NAHBS Days

 

TEXT : SHINYA TANAKA
PHOTO : RIE SAWADA

 

色々と思うべきこともある。
そして色々やるべきこともある。
そんな変わり始める瞬間がまさに今なのかもしれないと思った。

 

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「シャーロットはとても不思議な街だった。ダウンタウンのほとんどの高層ビルにはアメリカ有数の大銀行の名前がつき、僕の知るアメリカらしからぬパリッとスーツを着た人々が街に行き交う様は、やって来た時に上空から見た大自然の中にぽつんとある高層近代都市その対比の奇妙さと感覚がすごくマッチしていた。」

 

“NAHBS総論”

 

僕がNAHBSに出会ってもう8年が経った。そう8回続けてそこにいた。そしてショー自体は今回で10回目になる。初期の頃からからずっと来ている人たちはもうほとんどいない。出展者はもちろん、来場者についてもだ。ピークは4年前のオースチン、その翌年のサクラメントは鬼のように忙しかった。(なぜかって?そもそもカリフォルニアのビルダー数は半端なく多い。)しかし昨年のコロラド、続いて今年のシャーロットは、ともにとても寂しい結果に終わったはずである。まず最初に僕の考えから言うとNAHBS自体があまりにも保守的に、かつ政治的になり過ぎたのが最大の原因ではないかと思っている。運営自体のこと、その街のこと、そしてもっとも大事なお金のことなどいろいろと考えるべきことは多くあるのだろうが、やはりそれ以上にお金を払ってくれる人たち(来場者、出展者)のことをまずは真摯に考えることが商売の基本だと僕は思うし、そこがとにかく下手だなって思ってしまうのはけっして僕だけではないはずだ。また実際現場にいると入場者数の減少を感じるというのはやはり寂しいもので、過去のポートランドやオースチンでは感じることができた、”人々から発散される様々な思い”が作り上げる独特の高揚感というものはそれ以降のショーにおいて一度も感じることは出来ていない。しかしながら自身の”慣れ”というものはたぶん想定以上に大きく、現場においての自身の立ち位置の変化が与えた影響は計りしないのでここに少しエクスキューズもしておかねばならないかと。

 

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「Sycipの娘リアのチタンバイクに跨がるその日一番のかわいこちゃん。」

 

それでもNAHBSのおかれた状況を出展者側の目からひとたび見ると、ロックロブスターのポール(UBIの先生でもある。)も言っていたのだが、やはりこれからの若い世代のニューカマービルダーにとってはなくてはならないとても大事なショーになっているし、限りなくほとんどであろう単身でモノ作りをする人たちの多いこの業界において、今では昔より少なくなったと言われるマスメディアに対する露出の期待度もまだまだ大きいのだ。やはり一人でモノをつくるということはかなり地味で大変な作業の連続であり、さらには受注管理、そしてファイナンシャル、はたまた一番大事なプロモーションとしてのBLOGやSNSの更新ですら面倒くさいと思う人も少なくはないはずで、僕らに近いビルダーたちも時々は嘆いたりもするのだ。いやはやさておきこんな話しはどこまでも長くなってしうので、NAHBSの価値は一旦棚に置いておいたうえでやはり伝えるべきことは今回のNAHBSに展示をしたビルダー達のそれぞれの評価やその作り上げたモノの価値が下がっているということでは決してないということだけはぜひ理解していただこうということで、次の話に繋げていきたいと思います。

 


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ロンさんはあいかわらずに元気でしたがあまりの忙しさに、すまないと。。。」

 

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「一張羅は被るのが世の掟。」

 

“プロモーションと製造”

 

わりと最近のトレンドがこのNAHBSというショーから生まれ、また新たな価値観を持つ多くのニュータイプサイクリストを誕生させることがなぜ出来たのだろうか? 簡潔に言うと製造者とコンポメーカーは実に近い距離でモノ作りをしており、そのビルダー自身の感覚と製造タイムラグの少なさを活用、そして製造からのスモールメディア戦略。(マイノリティーはここが好き!)そして1年後のマスプロメーカーとのビックメディア大戦略へとしっかり繋げてのビックトレンド完成(マジョリティーはここが大事!)と言った感じだろう。今回でもENVEのマウンテンフォークはIFと協力してどのショーよりも前倒して僕らの目の前に登場したし、SRAMのCX1もメディアとの事前連動も含め今回初めてドリームバイクとして展示もされた。やはりワンオフメーカーとしてのハンドメイドフレーム製造の身軽さの表れと言っても過言はないのだけども、またそれを安易に受け入れ過ぎたがゆえに期待感と製造側の持っているリードタイムとのギャップを埋めきれず、一部はマスプロへの逆行に繋がっているということも少なからず見受けられる。またそのギャップの持つ意味は非常に大きく、単純に購買の動機やタイミングにも直接的に繋がるため、それが今回から様々なブースで見受けられる様になった“短納期型プロダクションラインハンドメイドフレーム”の増加となったのではないだろうかと僕は考えている。そしてまとめとして何事にも言えるのだが現在はプロモーションのメリット、デメリットを最大限に理解して行動が出来る人たちの時代だと言えるだろうし、よりジェネラルな意見として利益、生産性などを考慮した上で今まさに生産現場とメディアをより密接にする重要性をアメリカは気づき始めているのだろう。(あくまで巨大な自国マーケットがあってこそなのだが。)

 


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「ここまで本所のセクションがならぶとやはり見応えがあります。」

 

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「巨人マイクデサルボ。数少なくなったオリジナルNAHBSメンバーであり、バックオーダーは20本常に抱え、UBIで先生をしてビルダーのタマゴを育て、年間に100本近いフレームを製造する。そしてたまにOEMもする。一言で言うと彼はビルディングモンスターである。そして僕をこの道に導いて来た最大の理由でもある。」

 

“人を知るということ”

 

だからといってカスタムバイクを時間を待って購入する意味が無くなるという訳では決してない。まさにリアルサイクリストの(レーサーのみがリアルと考えるべきではなく、むしろ僕が好むサイクリストとはひとつの価値感に囚われないあくまでも柔軟に”早くとも遅くとも”自転車を道具として使いこなしている人々である。)考えるその思いをとても近い感覚で理解をしてくれ、その要望に添ったモノを(あくまでも一点ものであるにしろ)リーズナブルプライスで提案をしてくれ、かつバイクフィッティングまでも行なってくれるということは、その意味を知った人間にとっていかにプラスの意味を持つであろうかをぜひ考えて欲しい。そしてそれらをさらに要約すると、早い段階で製造のプロフェッショナルに出会うということは長い年月に置き換えた時に限りなくローコストとなりえるということなのだ。加えてそのオーダーに対してもタイヤサイズから始まり、その人の乗車に対するイメージ、また多くの人が一番気にするその色目やデザイン、さらにそこに組み込まれるそれぞれのビルダーが独自に持つ自転車に対するイメージや感覚を丁寧に足し算して出来上がったそのフレームというものは、当然ながらトレンドやコンポメーカーが常に考えざる得ない”商売的な思惑やトレンド”などを遥かに飛び越えたところに位置されるはずであり、さらには自転車という”モノ”を通じて出来上がった人と人の繋がりは”性能”という概念を超越する存在になり得るのだし、そして実際僕にとってはそうなってしまったのだから。
そして今ここで思うことは変わるべき物事はちゃんと確実に変わっていくし、変わりゆく必要の無いものは自然にそこに留まるのだということを少なからずの人間が理解していれば良いのだとも思うわけなのだ。

 

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「サザンフードと言えばフライドチキンと相場は決まる。」

 

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「パーティーの夜は満月。何かが起こる?」

 

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「キングのパーティーは今回からオフィシャルに昇格。上機嫌でサーブするキング、ジェイ、キング嫁マンディー、そしてクリスデミーノ。デミーノは前Cylde Commonのチーフシェフで、グルメセンチュリーの全てを切り盛るために最近CKに入社。今後もマストノウパーソンだ。」

 

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「クリスキングにRetrotecのカーティスが12本のワインを送る。それぞれ違うワイナリーで働くキングパーツを装着したバイクを持つサイクリストに頼んで最近の出来の良い12本のワインと、彼らが乗る自転車を写真集にしてしてプレゼントした。そしてキングの喜び方は半端無かった。」

 

“コミュニティーとは”

 

加えてNAHBS最大の功績と言っては何なのだが、来場者にとってドリームバイクを間近で見ることができる、そして作り手に直接話を聞いて自分の想い描く夢を考えてみるというのはもちろん当然のことなのだが、展示側つまりビルダーが年に一度、普段はほとんど会うことがない他州のビルダー達とも出会うことができ、そして会話をしてソーシャライジングをすることができるということはこの狭い世界においてはとても重要な役割を持つ。ありがたいことに普段からとても仲のいいSimWorksでとり扱うほとんどのカスタムビルダーたちは週末になれば一緒に自転車に乗り、話しや製造上の相談などをしたりしているのだが、やはり3日間の長丁場を同じ環境下で過ごすということは稀なのである。そこで上記の写真のようなカーティスのクリスキングへの最高の”おもてなし”や、一緒の時間を過ごすにつれ以前よりもより親しくなっていくビルダー同士の関係性を見ていると、それはまるで一隻の舟に乗る見知らぬ人たちがしだいに家族の様に思える様になっていくかのようで、本当にコミュニティーは大切で素敵だなぁって思ってしまう。(クリスキング自身とその会社がフレームビルダーに対しての関係をいかに重要視しているか、そして少し下世話であるがプライスに対しての配慮をどう考えているかを知るとさらにクリスキングという会社の性格と素性が理解出来る。そしてSRAMやSHIMANOなどのビックカンパニーにいたってもサンプルフレーム製造依頼などにおいて小さなハンドメイドフレーム製造メーカーの意味は彼らにとってもけっして小さくはないのだともわかる。ちなみに年に一度SycipはTeam BMCがサンタローザに拠点があるということで様々な長短、角度の大量のステムをシーズン前にオーダーしてくる。まさしくそこに存在する多くの人たちがコミュニティーを創造するということがとても大切なことなのかを産業全体で理解している感じもする。そして我が国と対比してみてどうなのだろうか?)

 

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「マイメン達。男はどの国でも一緒だとわかる。」

 

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「今回のバイクのコンセプトをジェレミーが決めてから毎日の様にジェイに電話をしていたらしく、彼らは久しぶりに僕にSycip本来の兄弟愛をしっかりと見せてくれた。」

 

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「BreadWinnerはポートランディアの意地になるべき存在。」

 

“ヒトを表現する意味”

 

最後にSimWorksの扱うSycipRetrotec、また私たちの販売店舗である自転車店Circlesが取り扱うBreadWinnerもありがたいことにNAHBSの各コンペティションで賞を得ることができたのだが、それ自体が持つ意味は僕ら(彼らも含め)にはそこまで大きいものではなく、あくまでも彼らが提案したその年の“センスオブヒューモア”が人の心に少しだけ届いたのだと僕は考えている。(受賞を目的と位置づける人たちも過去から現在まで軒並みいるのだが、とてもアーティスティックで極めて工芸品的なので、ある種全く違う”モノ”としてとらえることになる。)まぁ受賞という一言で単純に数字が伸びるならばとっても楽チンなので大いに結構なのだが、事実物事はそんなに簡単ではない。何時においても各ビルダーの思いをやはり理解しておきたいと思うし、いまここで丁寧に伝えるべきことは、なぜその自転車たちを各々が作ったのかということに尽きるのだろう。Retrotecのカーティスはレースそのものが大好きだし、最新のトレンドを自身のバイクにきっちり使い切った上で、改良を常に施して今年のバイクに備えた結果だし、Sycipのジェレミーは子供がじょじょに大きくなり自転車で毎週末のように子供たちと近くの山の中で遊び回ることが増えて来たことによってのニーズだ。Breadwinnerのトニーは故郷コロラドを離れ現在ポートランドに住むのだが、ひとたびも山遊びの楽しさを忘れたことはなく、こちらも毎週の様にランバーヤードの室内ジャンプトレイルに遊びに行っている。とても良い意味で各自のパーソナルな部分が今回のバイクにしっかりと反映されている。それがおまけの”賞”となって彼らに帰って来たこと含めて見てもらえたならばきっと彼らも光栄であろう。そして全ての人が持つであろう大事な感覚 “センスオブヒューモア” にすこしでも触れてくれたのならば、僕らや僕らの販売店により詳しく訊ねてもらえると本当に嬉しいかぎりである。

 

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「The Best Picture of This Year!!!」

 

“to the future”

 

現実的に僕のこの思いの一語一句をすべての人に正確に届けるのはやはり難しいとは思っているのだけど、でも出来るだけ丁寧に僕らの思う自転車にまつわる“ヒト・コト・モノ”、そして“環境”と、とても多岐にわたることなのですが、決して止めることなく少しづつでも伝えていくべきだなとNAHBS最終日に思ったのです。そしてSimWorksや我々と関連を持つ人たちは”現状以上”の物事を求めていることは事実であり、次に進む為のプランを実は少しづつ練り出しています。そして”現状以上”の物事とは何かと問われるならば、より多くの人たち(使い手)がビルダー(作り手)と共に時間を分かち合い、単純に楽しむこと、すなわち自転車に一緒に乗る時間がこの世界にはもっとも必要なのだと、今まで多くのショーを経験してきた僕らを含む仲間たちが今心底そう感じているということが、次のプランの重要なファクターになることは明確であると信じ、次を見据えて行動に向かいます。

 

NAHBS Days番外編に続きます。

 

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