RIDE IS LIKE HAIKU vol.9
Text & Photo by Tomokuni Ohmura
2019 4 14
何度も過ぎた普段の通りに今年も普段通りに桜咲く。
冬の厳しさは過ぎ去り、春の優しい気候は絶好の季節。
いつものとおり自転車に乗って、山の方へと向かう。 日射しは暖かく、風はほんのり冷たい。山へと向かう途中に川沿いを走れば、僕と同じような格好をしたすれ違うロードレーサー。 暖かくなったせいか、自転車やバイクで走っている人を多く見かけるようになった。
長い峠道に差し掛かり、ダンシングの割合が多くなってくる。 シッティングでぐるぐるペダルを回すよりか、ダンシングで自転車を振って力強く登る方が僕は好きだ。
確かSevenを注文するオーダーシートに、ダンシングの割合を記載する項目があったと思う。 そのせいか今まで乗ってきたロードレーサーの中では一番気持ち良く車体がふれる。
ダンシングとシッティングを繰り返し、徐々に息もあがってくる。 バイクが僕を追い越しざま、親指を突き立てて差って行く。 僕も同じように親指を天に突き立てようと一瞬思ったけども、何故が少し恥ずかしくなってダンシングに切り替える。
再び両手をハンドルのグリップに添えて、左右に自転車を振って登ってゆく。
さあ登りが終われば下りの時間。僕はいろんな人から下りが速いと言われる。
現に下りは好きだし、何より高スピードで車体を傾けてカーブして行く瞬間がたまらない。 少しでも気を弛めれば、落車に繋がりかねない状況だけども、股がる相棒を信用して、何も考えず、この瞬間だけを判断し、右へ左へと自転車を傾ける。
ある程度走ったところでお腹が空いてきた。
僕はライドの時には出来うる限りコンビニ補給等ではなく、現地の店で食事をするようにしている。
最初はピチピチのレーサージャージで店に入る事を躊躇うかもしれないけども、意外と周りの人は気にしていないように思う。 むしろ何度か同じ店に通えば、「いつも自転車で来てくれるお客さん」なんて迎えてくれるようになってくる。現に僕の場合はそんなお店がいくつかある。いつか「ライドのグルメ」なんてブログが書ければなぁ、なんて思いつつ…。
ちなみに今回は桜が見える古民家カフェで、地元の豆腐を使った麻婆豆腐。矢作ダムの近くにあって雰囲気も良く、ランチの味もこれまた良し。食後のコーヒーまで頂き「ありがとうございます。いってらっしゃい」と店員さんの言葉を背にまた走り出す。
ゆっくりと食事を終え、何度も訪れる登りと下りを繰り返し、何時もであれば通り過ぎる普段の道。 そこには青い空に浮かぶ桜の花。
これだからライドはやめられない…。
思わず相棒から降りてパシャり。そんな風に何処でも勝手に止まれる事も自転車の魅力。 丁度通り掛かった車は、少し速度を落として過ぎて行く。 きっと桜を美しいと思うDNAが日本人には組み込まれているんだろうと思う。
登りを楽しみ、下りを楽しむ。
補給を楽しみ、現地の人々と会話をする。
すれ違う自転車やバイクと軽い挨拶を繰り返す。
とあるおじいさんから「何処まで行かれるのです?」と質問された。
「日が暮れるまで走るだけです。」
しわしわの顔を更にしわくちゃにして笑われた。
『過ぎ去りし普段の通り桜咲く』
それではまた次回。