【Silca】TIRE PRESSURE
優れたモノを、しっかりと手を入れながら、末長く使い続けていくということは、自転車のみに関わらず、身の周りの製品や道具においても実践したいことですね。 その構造や手入れの仕方を理解しておくことと同時に、それをどう正しく使うかを理解しておくことも非常に重要なことです。
美しく、機能的で、強度が高く、耐久性があり、長寿になるように設計されていることでも知られる SILCA / シリカ の製品ですが、長い歴史の中でイタリアの創業者からその意志を引き継ぎ、現在アメリカにその拠点を移した現代表であるジョシュア・ポーターによる、彼らの作るポンプを正しく使う上でも最も重要と言える考察を、ぜひ皆さんにもご一読頂きたいと思います。
タイヤ空気圧
– 皆さんが気をつけなければいけない一番大事なこと –
– 皆さんが気をつけなければいけない一番大事なこと –
私たちSILCA / シリカのウェブサイトを通してたくさんの素晴らしいコメントや、多くのEメールが寄せられています。 その中において共通した、「タイヤの空気圧というのはどのくらい重要なのですか?」という質問があります。 実際の所、私たちが作るフロアポンプに対して反論するように、このような質問に対して続く言葉が、「4年間使い続けている〇〇という80ドルくらいのフロアポンプがあるのだけれど、何も問題なく使えているんだ。 それに比べておたくの作っている高価なパンプはとても馬鹿げているし、必要ないと思うね。」といった具合のもの。
ちなみに、私たちはこのような面白いコメントをとても楽しく読ませてもらっているわけなのですが、ここ数年でわかってきたことは、みなさんにとってタイヤ空気圧というのは討論の余地がなく、問題にもならずに既に解決してしまっていると信じられているということです。 そう、とりあえず許容空気圧の最大値まで空気を入れて、そのまま走り出せば良いのだと思っている方がほとんどなのです。
幸運にも、私たちの周りにいるプロツアーメカニック、チーム、プロサイクロクロスメカニック、ナショナルトラックチーム、そして多くの関係者がタイヤ空気圧に関してとても理解しており、私たちが作る、『馬鹿げた不必要な』ポンプを彼らは使用し、何度も何度も世界におけるチャンピオンシップやイベントで優勝してきているのです。 にもかかわらずなぜ一般的な知識とプロレベルの経験者との間に矛盾が生じるのでしょうか?
まず最初に、これはもう既に自転車だけに関わる事柄ではなくなっているのです。 トップレベルのプロレーシング、ロード、マウンテン、サイクロクロス、モーターサイクル、インディカー、F1においてもタイヤ空気圧というものはチームやエンジニアにとって、難題の一つであり、適正値を求めれば求めるほど時間のかかるやっかいなものなのです。
例として、F1ではCFDやFEAなどのコンピューター技術で、エンジニアがバーチャル上でエンジンを作ることができ、馬力、トルク、温度、を計算し、的確な数値で空気力学や、減衰率をも含ませたサスペンション運動学をも採用することができます。 しかし、バーチャル上で完全なレースカーを作り上げるには、タイヤメーカーからの大量のデータプロットを必要とし、その情報を作り上げるのには様々な空気圧で走らせたリアルなプロトタイプのタイヤをも必要とします。 本物のタイヤの動力学はとても複雑であり『解決』などという言葉からは程遠い場所にあるのが実際なのです。
では、なぜここまで空気圧が重要になってくるのでしょう? 1つの理由として、タイヤは唯一自転車と道路を繋げているものだからです。 全ての力がタイヤを通して伝わり、タイヤは道路に対してトラクション装置の役割をし、自転車に対してサスペンションの役目を果たし、リムに対してプロテクションとして働き、そしてタイヤは垂直だけではなく、横に、前後に、そして回転しながら変形するので、複数の軸が生まれるのです。
このような変形を通してタイヤは道路との間にコンタクトパッチ(接触面)を作り出します。 このコンタクトパッチによって前に進むために摩擦を減らしたり、ブレーキの力を小さくさせたり、コーナリングができるように側面の力をコントロールしたりすることが可能になります。 この時、コンタクトパッチの一貫性を保ちながらタイヤのケーシングは道路における良し悪しによってライダーの意志に関係なく変形します。 インラインスケートを経験したことがある人ならば粗悪な道を走った時に感じる最悪な状況を想像できるでしょう。 インラインスケートに装着されている硬いウレタン樹脂でできたホイールは滑らかな表面を持つ場所では効果的ですが、どちらにしろ跳ね返りばかりの粗悪な道ではコントロールをすることも不可能なのです。
究極に言えば、タイヤ空気圧がそこまで公の場で語られたり、考えられることがないのは、そんな簡単な問題じゃないということなのです。 例え答えが出たとしても各ライダーによって違い、コースによっても違うのです。
自転車においてみんなが好きな話題は諸問題に対する最大の数値はとか、最小の数値はなどでしょう。 これには簡単なマーケティングのメッセージが込められているのです。 というのも、これらの最大最小という言葉は伝えやすく、覚えやすいという利点があるのです。 例えば、重量:最小値、硬さ:最小値、空気力学:最小値、迎合性:最大値などなど。(面白いことに、私たち人間は新しいものを購入する時はいつも最大値やら最小値やらを気にしがちです。)
しかし、タイヤ空気圧はというと、『最適化』を考えなければいけない問題であることはご存知の通り。 それを追求するにはライダーの体重、道の荒さ、タイヤの幅、リムビードの幅、タイヤの直径、タイヤの構造、そしてもっともっと多くの数値が必要となるのです。 空気圧に関しては購入して利用できるようなものではなく、学ぶこと、経験すること、そして理解することから得られるものなのです。
Words by : Joshua Poertner
Finest Components
そしていちばん大切なこと、すなわちあなたが覚えている限りの、あなたが所有したモノ、あなたを失望させることのないモノ、汚れて傷ついたモノ、あなたが生み出した物語に現れたモノ、たくさんのすばらしいライド、そして偉大な乗りモノが生み出した、多くの友人たちとの素晴らしい物語。