Sea to Summit : Ride With Doppo vol.2
All Text and Photo by Masashi Kimura
Camera : Leica M-P (typ240)

僕ら SimWorker は名古屋に住んでいるのだけれど、名古屋がある場所は濃尾平野という、日本で5番目に大きな平野である。平野は人が集まりやすく、人口が集中し、都市になり、工業や商業が生まれる場所であり、ここはTOYOTAをはじめとしたクルマ産業の中心地だが、日本の国土から考えると、ほんの一部分に過ぎない。
日本の国土の75%は山地や丘陵地で覆われており、山地は谷によって細かく刻まれ、斜面は一般に急傾斜な土地が多い。また世界有数の活火山を有していて、世界中にある約1500の活火山のうち、111もの活火山が日本にある。

その活火山は、時に恐ろしい被害をもたらすが、同時に大地のめぐみをもたらす。降り積もった火山灰は水はけの良い土壌をもたらし豊富な農作物を生み出し、隙間の多い溶岩でできた土地は、雨を濾過し綺麗な湧水となって我々の渇きを潤す。地中にあるマグマは地熱となって豊かな温泉文化を育んだ。
日本古来からある原風景や、その場所固有の野菜や海の幸など、日本の本当の豊かさを知ることができるのが、日本の山村地域や漁村である。

僕は速く走ることはとうに諦めているし、最新のバイクパーツにもあまり興味がそそられない。自転車になぜ乗るのか?ということに対する問いの答えは、そんな豊かな土地の景色を探し求めて自転車に乗っているといっても過言ではないかもしれない。
今回の旅先は島原半島。
島原半島は長崎県にあり、雲仙火山の噴火で隆起してできた半島である。雲仙天草国立公園という、日本で最初の国立公園がある場所で、開国後の日本において外国人滞在者の避暑地、温泉地として親しまれてきた歴史がある。
この雲仙火山は1990年から1996年まで噴火活動が続き、この地に甚大な被害をもたらし、その噴火の隆起で平成新山という、日本で一番新しい山を作り出した事でも有名である。

また、この地は戦国時代からキリスト教が普及し、激しいキリスト教弾圧を受けた土地でもあり、隠れキリシタンの文化がある場所であり、文化的にも珍しいものが多い。
そんな豊かな地理的、文化的背景もあり、非常に興味があった土地である。その土地を丸ごと味わおうと、雲仙の山を北側からヒルクライムして、山の中にある雲仙温泉から西側の小浜へ下る計画を立てた。(本当は半島の南まで行きたかったが、日程の都合で断念した。)
スタートの地

そのスタート地点は古部駅とした。

島原鉄道の古部駅はノスタルジックな単線で、1時間に1本程度の運行だ。


吹越峠
この海抜0m から1000m UPの峠越えが始まる。

大袈裟にいうと、島原半島は雲仙火山が隆起してできた半島なので、半島そのものが山と言っても過言ではない。つまり海抜0m から山が始まり、標高1000m まで一気に登り、獲得した1000m を一気にくだる。

少し登った場所からは、遠く福岡県の町が見える。

徐々に標高を稼いでいくが、前を見れば雲仙岳、後ろを振り返れば有明海。
吹越峠を目指して登っていくルートは、天皇皇后陛下も通ったらしい。エンペラールートである。

このルートの途中にある、岩戸神社は断崖絶壁の場所に祀られた、神秘的な場所で非常に美しい。

この神社にはさまざまな伝説がある。

神社の奥の祠の洞窟には、なんでも縄文時代の人々が住んでいたらしい。

半島の北側からのルートにはスイッチバック(つづら折り)の道はなく、とにかく直登のルートが続く。
息を弾ませながら、ひたすら勾配に耐えて登っていく。

とにかく吹越峠に向かうこの直登がきつい。

険しく、厳しい山の表情が近づいてくる。

雲仙はいくつかの山の連峰になっているので、複数のピークがある。その谷間を縫って走るオンロードをひたすら登る。

山頂は雪化粧である。そして振り返えれば有明海。海の向こうの熊本県が見える。

最後の登りを登り切ると、向こう側に見えるは橘湾。今回の目的地である小浜を望める。

雲仙地獄
大きな峠越えの後に現れるのは雲仙温泉。この地域では昔は雲仙と書いて「おんせん」と読んでいたほど、この地域は温泉が多い。
そして、地獄である。


地面から蒸気が噴出している場所を「地獄」という。

日常生活ではあまり見ない景色に息を呑む。

雲仙では観光局の方々と、雲仙山頂コーヒーさんに大変お世話になりました。



旅の出会いで、久々に楽しい出会いでした。
小浜
次の目的地は山をくだって小浜という、これまた有名な温泉街に向かう。

一気に1000mUPしたので、海へは1000mの下り坂である。

個人的に、日本のこういう景色が好きだ。
集落に降りると、素敵な方達との出会いがあり、しばしおしゃべりをしてしまう。


小さな集落を抜けると、温泉街が見えてきた。


西側に面した地域なので、日没が美しい場所。

詩人の斎藤茂吉も愛した場所である。

蒸釜
宿泊先は小浜温泉の蒸気屋

小浜温泉の特徴は、源泉の温度が 105℃ あることで、沸騰したお湯が湧き出ていること。これが結構珍しいらしい。
その恩恵で、この地域では、湧き出る温泉の蒸気で調理をする蒸釜があり、蒸気屋はそれが体験できる。



塩気のある泉質なので、土地の野菜や魚をそのまま蒸すだけで十分に美味しい。滋味深い味わいが楽しめる。これはゴージャスな体験だった。これだけでまた来たいと思わせる。
旧小浜鉄道廃道を行く
ここまでで十分に満喫したし、あとは家路に着くのみ。と思っていたが、もう一つハイライトがあった。
お世話になった蒸気屋で「長崎空港まで帰るなら、海沿いの道を行ってみてください。昔の線路の廃道が県道になっているので、景色もいいですよ」という話を聞いて、海沿いの県道201号線を行くことに。
ここがまた風情のある良い道だった。
旧小浜鉄道は、橘湾の海沿いに愛野から肥前小浜までを繋ぐ、戦前の昭和2年から昭和13年までの、わずか10年ほどの短い期間に運行された鉄道で、この道を走って思うのは、ずいぶん開発が大変な難所であったということである。

崖を切り開いて、さぞ苦労したであろう面影が残る。

単線のトンネルも県道として、いまだに使われいてとても風情がある。

この道から見える漁村も美しい。

途中には駅があった場所に石碑が建てられており、この木津の浜駅跡には、駅のプラットフォーム跡も残されていた。


このルートには、日本の山の表情や、温泉街の風情、穏やかな海、そしてそこで採られる食物の素晴らしさが楽しめる。

短い時間の滞在だったが、濃厚な体験だった。これはまた来る必要がありそうだ。
Equipments

Frame | SIMWORKS Doppo Ronin / Size : S |
Stem | SIMWORKS Tomboy Stem / 90mm |
Tire | SIMWORKS The Homage 650 × 55B |
Rim | SIMWORKS Standalone 001 |
Spoke | SIMWORKS Peregrine Spoke – 14 Straight Gauge |
Seat Post | SIMWORKS Beatnik Seatpost / 300mm |
Spoke | SIMWORKS Tiny Bubbly / Bronze |
Rack | SIMWORKS Obento Rack / Black |
Front Bag | OUTER SHELL 137 Basket Bag / Burgundy |
Seat Bag | OUTER SHELL Dropper Seat pack / Marigold |
Frame Bag | OUTER SHELL Half Frame Bag / Marigold |
今回の装備は、基本的に OUTER SHELL のバッグ類を使用した。

特にフロントバッグは出し入れが多いカメラを入れたり、ガジェットなどちょっとした小物を入れておくのに非常に重宝した。この 137 Basket bag は専用のカメラ用のパディングインサートもあるが、僕が日常的に使用している DOMKE の F-2 のインサートがジャストで入ることがわかり、DOMKEのインサートを使用した。

また、輪行で重宝するのは、Dropper Seat pack で、これは、フレームに逆さにつけることによって、輪行時のパッキングをスマートに行えるのでおすすめ。

こうすれば、すべてのバッグを外さずに輪行袋へ入れられるので、特に飛行機での輪行時は絶対に使用するアイテムである。

SIMWORKS Thunder Strapは輪行の味方。何個か持っていけば必ず役に立つ。


ペダルは Tiny Bubbly を使用した。Doppo Ronin のフレームカラーと絶妙にマッチする。サイズ的にも輪行にピッタリだ。
