NEWS
2022/1/25

Wide bar addiction

 

 

ワイ中:[名]ワイドハンドル中毒の略。幅広のドロップハンドルに慣れてしまい、それなしではいられなくなること。また、際限なく幅の広いハンドルを求め続けてしまうことも指す。特に、悪路を走るライダーにおいて発症することが多い。


その異変に気づいたのは、2018 年の冬だった。Smog Cutter Bar を自分のバイクにインストールしてグラベルを駆け回っていた。「ロードハンドルのハンドル幅を選ぶ時は、自分の肩幅よりも少し広め」というのは単なる刷り込みとは判っていながら、コイツは完全に掟破りな幅の広いハンドル、でも不思議としっくりくる。もちろん悪路の下りにおいては敵なし。

久々にロードバイクに跨った時にはもう既に手遅れで、今では気づいたら手持ちのドロップハンドルを装備したバイクは全てハンドル幅が広くなっている。「もっと広いのをくれ…」と悪夢にうなされたこともある。ついに禁断症状まで出てきたか。

それから 2 年後、世界が例のウィルスにまみれた最初の年、夏の終りだったか、LA から一通のメールが届く。「Need more wider bar !!」送り主はまたコイツ、Golden Saddle CyclelyKyle。僕をワイ中にした張本人だ。

単身で LA に乗り込んだ若かりし僕を暖かく迎えてくれた Kyle。自転車とその乗り手の関係は人それぞれに異なるし、そもそも自由な乗り物なんだからもっとその自由を楽しもうぜ、って考えを地で行くオトコ。僕のライド観にもポジティブで大きな影響をくれた。

そんな Kyle と共謀して作った Smog Cutter Bar、始めは 480mmだった幅を、今度は 530mm で作りたいというわけだ。まじかよ!明らかな中毒症状。僕は僕で無意識にも「そうこなくっちゃ」と転がし始めたらもうそのことしか考えられない。ワクワクはとまらず、後戻りなどできるわけもなく。プロジェクトは渦の水面下、ひと目を避けるように深い奥底の方を進んで行った。

コンパクトなドロップ・リーチ、幅はとにかくワイド、けれどもフレアはなし。そんな一見荒くれもののようなハンドルだが、一度握ればその快適さの虜になる。「待ってました!」と喜ぶ他の連中の顔も浮かんでくる。

「とにかくありとあらゆるシングルスピーダーにお勧めしたい」とは Kyle 談。

悪路での安定感はいわずもがな、広いトップのフラット部分はシティクルージングにもとても調子が良かったり。幅を活かしてバイクをしっかり左右に振りながら、まるで自分の自転車とダンスするかのように小気味良く走れる感覚は病みつきになる。気づけば夢中になっている。ハンドル幅を広げると世界も広がる、これは事実。

シングルスピード、トラックバイクはもちろん、CX やゆったり系ロングライドにまで使用できる最高のマルチユース・ドロップバー。SimWorks Stelath カラーアノダイズド仕上げで、Froggy Stealth Seatpost とも相性良し(※色合わせについての注意)。自転車野郎の自由なマインドを大切に生きる Kyle の心意気とともに、容量用法を守ってインストールされたし。