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2014/9/29

-Monday Selection- 南アルプスを越えろ!

Text,Photo by Monjya

アメリカでMTBが生まれる前から存在した日本特有の自転車を使った山遊び、パスハンティング。
山がちな地形のこの国で必然的に生まれた峠を越える事を楽しむ自転車文化。舗装路だけでなく廃道や登山道までも含めたダートの悪路を登り、自転車を担ぎ、藪こぎして道無き道を行く冒険的要素の強いライドスタイル。
 
Wikipediaではそういった感じの記述でしたが、言葉の定義はさておき、伊豆のRidin’ Birdsのリサーチでパスハンティングについても色々と調べる機会を得ました。実際に旧道や廃道の道なき道を走る(というか担ぐ)レポートはとても新鮮で面白くて、リサーチそっちのけで読み耽ってしまいました。世の中には本当に色々なHENTAIがいらっしゃる。(完全に良い意味で。)
 
そして同じ頃、南アルプスの山小屋”椹島ロッヂ”で働く友人の女の子から、まもなくその山小屋を去る事と、来年から南アルプス地下を通すリニアモーターカーのトンネル工事が始まってしまい環境がかなり悪化しそうだという連絡がありました。
以前に静岡駅からその山小屋に自転車で向かい、GoogleMapに騙され山中で道に迷い、車で迎えに来てもらった苦い思い出の場所。それならば今年中にもう一度挑戦したいなと思っていました。
輪行で静岡駅下車、そこから約100km北上すると山小屋です。しかし南アルプスの谷筋は最終的に3000m峰にぶつかる長い一本道。帰りは同じ道を戻るしかありません。しかも駅と山小屋の住所はどちらも静岡市葵区(南北に長い葵区の最北端は間の岳(3189m)の山頂なのです)。まるで西遊記の三蔵法師の掌のようです。
 
どこか別の世界(道)に抜けられる場所はないか?
 
地図を良く良く見てみると、椹島のさらに奥の二軒小屋ロッヂ東側に少し標高が低くなっている場所がありました。ここを越えられないだろうか……?
 
という事で長い前置きでしたが、いくつかの偶然も重なり、伝付峠や奈良田越えと呼ばれているその峠を目指すパスハントの旅がスタートしたのでした。(このルートはかつて伊奈街道という道があったようです。やはり越えられそうな場所には先人の踏跡があるのです。)
 
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畑薙第一ダムから先の一般車両通行禁止の林道は素晴らしいジープロード。景色を堪能しながら二軒小屋に到着しテン場で一泊。翌早朝から伝付峠を目指しました。
 
甘く見てました。担ぎの峠越えは想像以上にハードでした。登山は常に滑落や遭難の危険がありますが、自転車を担ぐとその危険性がさらに増すのは当然です。2011年の水害でほとんどの桟道が流され今はほとんど往来が無いルート、結局8時間ほどかかりました。挑戦される場合は常に最新の情報と万全の装備を整えるようにしてください。あまり一般にはおすすめできません。
 
伝付峠を越えた後は奈良田温泉で野宿し、かつては30kmのダートとしてランドナー乗りの間で有名だったという丸山林道を通って甲府市街へ抜けました。(今ではほぼ全線舗装されています。)南アルプスの白峰三山と富士山が綺麗に見えました。
 
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使用機材についてです。MTBと迷ったのですが、昔メッセンジャーで使っていて今はCXレース用になっているクロスバイクをパスハント仕様にアレンジして使いました。CHRIS KINGとVELOCITYの手組ホイールはやはり安心感があります。担ぎがあるのでボトルゲージは取り外し、JANDDのパッドを装着。フラットペダルで登山靴を着用。バッグはこれもメッセンジャー時に使っていたChromeのバックパック。フレーム入りの登山用ザックだと乗車時に腰骨に干渉するのです。その他、ムーンライトギアで購入した世界最軽量のハンモック、モンベルのULタイプの寝袋。このあたりはCirclesのRideAliveに参加した時と同じです。耐久性や快適性とのトレードオフですが、荷物が軽量であることはとても大きなメリットになるので、UL(ウルトラライト)の装備はこれからも色々と試してみたいところです。
メッセンジャー装備の汎用性の高さはやはり素晴らしいですが、実際に使ってみると非常に多くの気づきがあります。SimWorks取扱製品の多くが実際に使う人によって生み出されている事実はやはり重要だと思います。自分の次のバイクもバッグも少しずつカタチが見えてきました。
  
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峠を登る時に足をついたら負け。というヒルクライムの精神性を放棄する事で見えてくる新しいルート。峠越えそのものが目的とはいえ、そこは2つの世界の境界地点、その先の目的地に行くための通路であり、ピークを目指す登山とはまた別のもの。つらい担ぎは正直かなり堪えたけれど、移動手段としての自転車の世界は大きく広がりました。またどこか行く時に、必要とあればやりましょう。担ぎでも藪こぎでも。
 
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Ride and Report by monjya

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