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2024/12/10

Digitaless : Ride With Doppo Ronin vol.1

Text and Photo by Kimuramasashi
Camera : Leica M6
Film : Kodak Portra 400

古代湖、琵琶湖

琵琶湖。日本最大の湖にして関西最大の水道水源で、そこから流れ出る瀬田川から、宇治川、淀川へと名前を変え、関西地方の生活を支えている。

また、この湖は古代湖と呼ばれる、100万年以上存在している湖としても知られている(他の代表的な古代湖に、カスピ海やバイカル湖などがある)

琵琶湖は約400万年前から存在し、現在の形になったのが40万年前と言われている。古代湖にはその土地の固有種が多数存在し、水源豊かな島国日本を象徴するような原風景がそこにはある。

琵琶湖の南には京都、大阪と、西日本を代表する都市があるが、京都は古代から天皇の住む都として、大阪は商人の街として栄えた土地で、古代日本の繁栄は、豊かな琵琶湖の水源が支えたと言っても過言ではないだろう。

ちなみに、仏教の総本山の一つであり、多様な日本の仏教の宗派を生み出した比叡山延暦寺、織田信長の天下統一の野心のもと築城された安土城も、この琵琶湖のほとりに位置している。

琵琶湖は琵琶湖大橋を隔てて二つの名称で呼ばれており、南に位置する南湖(なんこ)、北に位置する北湖があり、両方を合わせて一周200km、北湖の一周で160kmあり、距離は違えど琵琶湖を一周することを日本のサイクリストは通称「ビワイチ」と呼ぶ。

ビワイチは路面も整備されており、自転車初心者にも走りやすく、美しい景観を眺めながら走ることができる上に、周辺には立ち寄れる名店も多く、日本有数のサイクリングスポットである。

ちょうど新型の Doppo Ronin が仕上がったタイミングで、琵琶湖のほとりで行われる山道祭に参加すべく、シェイクダウンを兼ねて一泊二日のビワイチを計画した。

Digitaless

今回の旅路においてテーマにしたのは “ Digitaless ” というコンセプト。つまり、デジタル機材を使わずにライドそのものを楽しむというテーマである。

スマートフォンは、エマージェンシーや最低限のルートを確認するために用意するが、基本は電源は切った状態。デジタル機材は持ち歩かずに写真もフィルムカメラで記録する。

ライドツアー中にwebの情報を取り込む必要がないし、むしろその土地をダイレクトに感じたい。

タイムリーにその場をシェアすることが必ずしも重要なのではなく、この経験で自分の中に何が残るかを知ることに集中したい。

1ロール36枚という制限されたフィルムに、どんなショットを残すのか?もちろん、失敗するショットもあるが、それでいい。むしろ、それがいい。

撮影結果がわからない、やり直しが効かないフィルムカメラには、心が動いた瞬間がキャプチャされているはずだ。

ビワイチ

日本の道路は車両左側通行のため、ビワイチのルートは反時計回りに設定されている。どこからスタートしても良いが、今回は琵琶湖の東岸である長浜市からスタートした。

長浜市は、古くは羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)の本拠地であり、古い街並みが残る場所であるが、スタート時間が遅くなってしまい、宿泊予定地までの道程を考えて、寄り道はやめてルートを急いだ。

天気はどんよりと曇っているが、そのおかげか、靄に包まれて幻想的な雰囲気。

琵琶湖はバス釣りでも知られている。

今やスポーツとして楽しまれている釣りだが、この豊かな琵琶湖は、古来より人々の生活に寄り添った場所であったことが伺える。

長浜より反時計回りで湖畔を回っていくと、のどかな田園が続き、湖北と言われるエリアになる。

湖北エリアはビワイチで唯一の峠があり、トンネルがその頂上である。

トンネルを抜けて気持ちのいい下りを走る。

脇道の林道が気になるが、目指す目的地に急ぐ。

古いボートを植木鉢にしたユニークな植栽。

湖北を周りきり、湖西入った先にある名所といえば、白髭神社の湖に佇む鳥居を左手に見ながら、本日の目的地の近江舞子へ向かう。

目的の野営地に着いた時には、日没であった。

山道祭

山道祭は、ウルトラライト(UL)ハイキングウェアを開発している山と道が開催するコミュニティイベント。ハイカーさんたちが年に一度集まって盆踊りを楽しむイベントである。

盆踊りや、お久しぶりの人たちとの再会を楽しみ、夜が更けて行く。

簡素で自由な空間

前日は天気がすぐれなかったし、天気予報は日程中ずっと曇り〜雨予報だったが、朝は太陽が拝めた。

オレンジに深いネイビーのコントラストが美しかった。

夜明けとともにカラフルなテントたちが現れる

今回の天幕は Jindaiji Mountain Works のPB Tarp 8×10 を使用した。

なぜこのモデルを選んだか?モデル名が、大判カメラの規格と同じ名称のエイトバイテンだからという超シンプルな謎理由。自転車旅でなるべく荷物を減らしたいので、基本的に持っていくものは天井だけ。夏は虫除けにネットも持ち歩くが、自転車旅で標高の高いところに泊まる想定や北国など相当シビアなコンディションでなければ、だいたいこれで過ごすことができる。

自然の中に調和し、布一枚だけで隔て、空間を切り取って部屋に見立てて、最小限の自分の住空間を作る。そのタープの簡素な態度と曖昧な空間の自由さに、茶の湯の野点に似た侘びと寂びを感じるのである。

With Doppo Ronin

琵琶湖はエリアによって様々に表情を変える。

湖北の険しさ、湖西の長閑さ、湖南〜湖東の歴史の深さ。

そのどれもが美しく、味わい深いものである。

サイクリストにとっては、初心者向けのライドコースなのかもしれないが、速く目的地に着くことが目的ではなく、その土地の風土や歴史を感じながら寄り道して走るのを目的にするのならば、ビワイチはとても良い選択肢の一つだ。

FrameSIMWORKS Doppo Ronin / Size : S
HeadsetCHIRIS KING NoThreadSet 1-1/8″/ Black Sotto Voce
HandleNITTO B132 (Test Sample )
StemSIMWORKS Tomboy Stem / 90mm
TireSIMWORKS The Homage 650 × 55B
RimSIMWORKS Standalone 001
SpokeSIMWORKS Peregrine Spoke – 14 Straight Gauge
Main GroupMICROSHIFT / SWORD
SaddleSTEVE POTTS / Chinook Saddle
Seat PostSIMWORKS Beatnik Seatpost / 300mm
PedalMKS for Circles / Gordito Brass Black paint