森へ / TO THE WOODS..
リトルテネシーリバーの上流方向にフォンタナダムがそびえ立ち、夏の始め以来ずっと心に残っているエメラルドグリーンの貯水池がある。 波打ち際に沿ってトサリと呼ばれるノースカロライナ州立レクリエーションエリアを通り、松の木から落ちたトゲトゲしい葉っぱがブランケットのように40マイルもくねくねと一本道が続いている。
そこで私は17年前に訪れた肌寒い10月のとある日にマウンテンバイクに恋をした。
トワリで私は初めてバンクコーナーを学び、思わずびっくりするくらい興奮してしまうようなコースへ入ってしまったり、日の出から日没までトレイルを走っていたりした。 平和な森を駆け抜け、その静まり返った世界は完全に私のパラダイスと変わっていった。
マウンテンバイクは私が初めて見つけた最初のスポーツであり、初めて大好きになったもの。 私の両親は父親が所有していたマウンテンバイクをを与えてくれたけれど、
冒険そのものは私のものだった。
ノースカロライナの旅は始まりにすぎなかった。
そこから自分が行ける所はどこまでも行った。
スモーキーズ、ブルーリッジ、ピスガー、モノンガヘラ、アパラチアン、ソートゥース、イエローストーン、テトン、コロラドロッキーズ、メタコメットリッジ、そして両親の家にある裏庭のドゥーリーズランまでも。 場所はどこであれ、興奮を感じるのはどこも同じであり、完全に私は夢中になっていた。
大学を卒業した後、サマージョブとしてマウンテンバイクツアーのガイドを1年間ほどしていた。自分自身に言い聞かせたのか覚えていないが、1年が終わろうとしていた時に大学院生になろうと決めた。 すぐに荷物をまとめ、家に帰り、学校に舞い戻り、そして仕事を得た。
みんなも体験していると思うが、マウンテンバイクに乗らなくなってからの13年間は目を一瞬閉じたかのように早く過ぎ去った。 自分のマウンテンバイクは父親に返し、そのかわりにロードバイクを乗り始めた。
事実上、私はもうマウンテンバイカーではなくなっていた。 Vブレーキがディスクブレーキに取って代わり、トリプルチェーンリング、フラットバー、バーエンドは全て消えていた。 26インチホイールは27.5インチや29erなどを海の底から沈みながら見上げていた。 “ジュディーバター”などもう必要なくなっており、自分のマウンテンバイク用のグローブは既に小さくなっていた。みんなは『ライド』という言葉を使わずに『シュレッド』というようになり、グレイトフルデッドのステッカーはもう何年も見なかった。 マウンテンバイクというものはもう既に通り過ぎてしまったかのように思えた。
昨年の4月に、再び自分の気持をトレイルに舞い戻らせるためにコネチカット州のグリーンウィッチにてロードライドを実施した。グループライドのリーダーはくねくね曲がった丘や、美しい田舎道を案内してくれていたが、久しぶりに自分の心が森の中へ引っ張られていった。 覚えていないが、チャンス到来かのようにトサリの話になり、別のライダーもそこへ行った事があり、同じような素晴らしい体験をしていた。 トレイルや、松の葉っぱ、そしてあの輝かしい湖についてお互いの記憶をたどりつつ話し合った。 シルクのようにスムーズなグリーンウィッチの路上で、もう一度トレイルを走ろうと決心した。
冬の寒さが和らぎ、雪に覆われたトレイルが再び出始める頃、ようやく自分のマウンテンバイクが完成する。
一緒に走ってみようじゃないか。
Episode: TO THE WOODS
from INSPIRATION AND IDEAS by SEVEN CYCLES