FEATURE2015/5/5Kingをめぐる冒険(中)/PORTLANDIA
何はともあれポートランドである。
ここまで頻繁に通うと今までは想像すらしていなかった。
そして想像の足りない僕は経験が全ての基本になる。
そして体験する。
空港(PDX)からしてとても“ポートランド”なのである。
すごくすんなり自分の気持ちが入っていくのである。
なんだこのフィーリングは? けっして都会というほどの規模ではないのにもかかわらず、なぜか野暮ったくない人や物事が集まる感じは。
人はとてもヒップであり、モノはとても誠実なものが多い。
そしてそれは東京や大阪などの日本の大都市ではまるで味わえない感じとも言える。
“豊橋”がもっと洗練された感じでもある。
(分からない人のほうがきっと多いかもしれないが。)
つまりは大都市ではないのにちゃんと機能しているってことに感動するのである。
ACE HOTEL & STUMP TOWN COFFEE
ACE HOTELは現在のポートランドの象徴なのかもしれない。
決して豪華ではない質素な部屋に必要な分だけ洗練されたものが集めてある。
1FにはSTUMP TOWN COFFEE が併設してあり朝早くよりダウンタウンで働く人々が出入りしている。
こういったサードウェーブコーヒーと呼ばれる流行が現在のアメリカで進行している。
拡大主義路線があまり好みではない人々が地場のロースターに寄り添っている。 それはまさに日本そのものである。
決定的な違いはマーケティングおよびプロモーションの方法とその質だと考える。
KENNY & ZUKE’S
隣にはCieloのホームページでもおなじみのKENNY & ZUKE’Sのデリがあり、そして食事は美味い。
また朝一番より全身にTATOOを入れまくったお兄ちゃんやお姉ちゃんがせっせと働く姿を見るのはやはり楽しくて新鮮なのである。
そして大事な事が何なのかを、みんな分かっている感じがするのだ。
PENDLETON
オレゴンと言えば愛なのは鉄板だが、僕にとってはペンドルトンなのである。
(工場見学は毎日できます。No photo pleaseでしたのでこれだけです。すいません。)
フレームビルダーの制服というべきペンドルトンなのだが、最近はポートランドの新鋭達の影響でオックスフォードのボタンダウンに取って代わられるのだろうか?
否! 多分キレイ過ぎてなり得ないであろう。
(若い層は気にしないと思うけど、ちょっとNYC気取りになるってところも西の古い人間にはペケなのかもしれないが。)
話はそれるほうが良く、道もそれたほうが冒険になりえるし、楽しいにきまってるのだ。
そしてまた街に戻る。
CyclePath
CyclePathは個人的にお気に入りの自転車屋。
どこよりもなによりも誰しもが持っていたアイデアをしっかり実行すると良い場所や物事になり得るということ。
Ned Ludd
Ned Ludd / アメリカの昔のアニメのキャラクターから名付けられたお店。オーナーシェフであるJason Frenchは今回のGOURMET CENTURYのメインシェフであり、ガスを使わずに石釜のみで全ての料理をサーブする粋な男である。
現場に粋な男と粋な女がいれば必ず美味くいくはずだ。
諸々の前菜。 バケットも最高だし、スモーク系も練り物系もどれもこれも。。。
春菊のサラダである。 アメリカには2軒の春菊農家があると言っていた。
メインは豚のヌードル。豚の脂肪をヌードルとして仕上げ味付けをした料理。かなりいける。
サービスでいただいたデザートも相当美味い。
Ned Luddはポートランドに行ったら必ず行くといいお店である。
なぜならその全てにChrisKing Precision Componentsと同じ匂いがするからである。
Chris KingもJason Frenchも元々ポートランディアではないのだが、多分自身の嗅覚や味覚を含める感覚を信じてポートランドにたどり着いているのだ。
そしてそこで何が出来るのか、何をすべきなのかを考え抜いた結果としての今を素晴らしい方法で提供していると思う。
SEE SEE MOTOR COFFEE
最近はモーターサイクルも人気の兆しと言ってもかなりマニアックなバイクを好む人が多い。
そして僕の範疇ではない。
モニュメントやビールはよりポートランドらしく見える。
ポートランドという街はとにかくコンパクト。
ダウンタウンから20Kmも離れればそこはもう素晴らしいくらいの田舎になる。 直接自転車で農家に食材を買い付けする事も可能であり、自転車というモノの本質を理解したうえでそれを活用できるような 自転力 を持つような人々にとってはここはもう毎日がパラダイスであろう。
だからこそ現在のポートランドへの人の集まり方が理解でき、そしてなぜアメリカにおいてもバイローカルやアクトローカルがどんどん進行しているのかが見えてくる。 もちろんそこにはアメリカ的な自己責任を徹底する上での “安心” と言うキーワードも含まれてくるのだが。(そしてヨーロッパがどうして現状の形態になったのか多少の推測も可能になる。)
平日の昼間、農夫達が街にやってきてファーマーズマーケットを開催し、生産者の顔が “直接” 見えるとともに、本日の旬モノはなにかとか、何をどうやって食せば美味しいのかなどの “会話” を楽しみながら夕食の内容が決まるのである。(こうやって説明するとけっこう当たり前の昔の日本の姿なのだ。それがどんどんと難しくなっている現状に僕たちは嘆くべきなのだろう。)
そしてこんなスタイル(食の新鮮さも含めて。)に憧れ人々が集まり、いまやこの街の常識がどんどんと外に増殖し始めていると言う事はきちんと知っておいたほうが良いのだろう。
Cielo by ChrisKing
そしていつもの場所に戻る時間はやってくる。
HEAD SETの看板がお出迎え。
初回のオレゴンマニフェストに出展されたCieloのツアラーはもちろんChrisKing本人のお手製。
何度もくどいようにお伝えしていますが、Cieloに使用されるSmall Parts群はすべてChrisKingの工場内のマシニング機械にて全て削り出されます。
エンド、リング、ブリッジ、ステーキャップなど出来得る限りのパーツ全てを自社で製造するというプロジェクトを彼らは当たり前にやっている、OEMが製造現場の中心的な考えとなっている現代において、この意味はとてつもなく大きく、そして他社が真似をしたくてもなかなかできないのが現実なのです。
ChrisKingの工場内では常に卵の販売用パック(アメリカの卵は紙のパックで売られています。)がストックパーツ置きの台紙になる。
効率性と機能性ならびに安価である。
ペイント工場も自社内にあります。
自転車製造でとにかく大事なのはこの行程であり、この製造ポイントが必ずといっていいほどネックとなるのです。
現在は2名のメインペインターと(1名がこの夏にまた入社しました。)ペイントの肝となる前処理を手伝うヘルパーが2名の合計4名で前に前にと懸命に動かしております。
そして少し前のBLOGにてお話したようにChris Igleheart がボストンより招かれてフレームビルダーとして2ヶ月前より働き出しています。
多くの人間がChrisKingで働けるのならばと他の街から、遠くは東海岸や南カリフォルニアからもやってきます。 それはもう前述した様にポートランドの街全体の成長に合わせるかのごとく、ChrisKing Precision Components社としての方向性の波長ときちんと合うのです。
また彼らの思い描く世界観やコミュニティーに対する愛と実行力は業界全体にも少なからず影響が与えられ、僕が知っている多くの自転力を持つ人々はChrisKingを単なる精度の高い自転車関連製造企業として捉えるのではなく、それそのものが大きなコミュニティーであり、また自身の世界観ときっちり波長が合う事も、出来る事なら彼らと一緒に仕事がしたいと思う気持ちが芽生えるのは正当な回答であると思えるのです。(製品そのものの良さ以上に、僕は彼らのパーツを出来るだけ使いたい、出来る限りの人に使ってもらいたいと思う気持ちの根底の理由です。)
初めて彼らの工房に足を踏み入れてから3年が経ちます。
そしていつもその有言実行感に僕は圧倒されるのです。
以前Jay Sycipは僕に言いました。 今後3年間で今の3倍のスピードでモノを作り上げると。そしてそれは常にChrisKing Precision クオリティーではないといけないと。
そしてそれはまさに実現されようとしています。(前回のFUTUREでは2012年には何とかなると言いましたが、今回訂正させて下さい。でもまぎれもなく来年のスピード感は今年を圧倒していくと思います。そして更なるNEWプロジェクトが始まる予感 or 悪寒?w)
来年の目標は納期1ヶ月を目指しています。(シッピングを含めた上での。)
正直今回の訪問で思いました。多分彼らなら出来るであろうと。いやするだろうと。
ゾクゾクする僕がいます。
一緒にゾクゾクしてくれる自転力のある日本人サイクリストが増えるきっかけ作りを何とか出来たら良いと常に思っています。
次回はもっとディープに “ChrisKing Precision Components” そのものをめぐってみたいと思います。
See you soon!