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2025/6/13

100Tacoと自転車文化について

いい関係はずっと続いているけれど、一緒にプロダクトを作るのは6年ぶり。そもそもSimWorksと100Tacosのミックとのつながりは10年になります。

そして、前回も今回も初期のSalsa CrMoステムへのオマージュしたグラフィックを使用していますが、それはちょうどSalsaがクロモリステムの製造をCrMoステムの製造をやめてしまったことが、SimWorks誕生のきっかけの一つである事ともリンクしています。

そんな100 Tacosとの関係の始まりや、その関係性、歴史、伝統的な美意識や、ものづくりの感覚などを共有できれば、もっと彼と生み出す自転車カルチャーが身近に感じられるでしょう。

そんなわけで、現在もGSCを引き継いだAllez LAで働くミックにインタビューしてみました。良い内容なのでぜひ読んでみてください。

出身地と現在の拠点はどこですか?

生まれ育ったのは、暑くて湿気の多いテキサス州ダラス。20年以上過ごした後、片道切符を買ってカリフォルニアへ移住し、それ以来ロサンゼルスに住んでいます。

自転車に興味を持ったきっかけはなんですか? 初めて「特別な」自転車に乗った記憶や、ライドに夢中になるきっかけになった瞬間を覚えていますか?

10歳の頃、森の中に年上の子たちが作ったダートジャンプコースを見つけました。彼らはタバコを吸っていて、正直ちょっと嫌な奴らだったのですが、「自転車ってなんかカッコいいんだ!」と思ったのを覚えています。
それから約15年後、カナダからメキシコまで西海岸を自転車で旅しました。自転車はCraigslistで手に入れ、タイヤは近所の自転車ショップのゴミ箱から掘り出したもの。数日ごとに図書館に立ち寄ってメールを送る…そんな旅でした。最高に楽しかった!

100 Tacosを始めるきっかけは何でしたか? その誕生にまつわる特別なストーリーがあれば教えてください。

僕がずっとやりたかったことは、友人のために料理をすること。そして、自分の何かを世界と分かち合うこと。それをカタチにして人生の一部になる程に長い期間やることになるなんて面白いですよね。
100 Tacosはまるで「シンプソンズ」のワンシーンみたいなもの。いくつかの自転車レースで、自分で作った100個のタコスを持って行ったのです。自転車の荷台にミルククレートを載せて運んでいました。みんな、それをいいねと思ってくれたらしく、「これは絶対に続けるべきだよ」と言ってくれたんです。

ずっと昔、テキサスではSpiral Dinerという店で働いていて、友人のMarioとOmarと一緒でした。仕事が終わると家で過ごしながら、くだらない落書きを描いたりしていました。そのうちのひとつは、まさにタコスと自転車が融合したような絵でした。

100 Tacosに活かされているスキル――料理、印刷、デザイン、クリエイティブなストーリーテリング――は、どのようにして習得したのですか? 自転車の世界、アートの世界、あるいはそれ以外の分野の人など色々な繋がりがあると思いますが、影響を受けた人物はいましたか?

面白いことに、僕たちがやっていることはすべて、これまでに培ってきた経験や身につけたスキルの積み重ねなんですよね。厨房で働いたこともあるし、友人がバンドのTシャツをスクリーン印刷するときに手伝ったこともあるし、街を歩きながらデザインやグラフィックに興味津々で目を向けたこともある。そういう創造力の源はどこにでも転がっているんですよね。壁に書かれた文字、歩道のセメントに刻まれた名前、街灯に括り付けられた古い自転車のグラフィック、すれ違った人たちの人生の断片――すべてが僕たちの脳を通過し、自分なりの表現として放出されるんです。

100 Tacosは、そうした表現の場として13年間続いています。もちろん、食べ物であることもありますが、ビジュアル表現や人々とのコミュニケーションの方法、そして人と人とをつなげることが、僕にとって同じくらい大切なんです。僕の一番のインスピレーションは、常に友人たち、つまり食事を共にし、旅を共にする人たちです。彼らは僕に音楽や本、アートなど、さまざまな刺激を与えてくれる。だからこそ、僕も自分の創るものを通じて彼らに刺激を与えたい。すべてが、循環しながら影響を与え合うプロセスなんです。

あなたのクリエイティブな活動において、最も大切にしている価値観や考え方は何ですか? それがタコスであれ、自転車であれ、その他のことでも。

僕たちがすることすべてが、地球に何らかの影響を与えます――良いものも悪いものも、そして中立なものも。僕が作る料理はすべてヴィーガンで、地球やそこに共に生きる動物たちへの敬意を込めています。この選択をしたのは何年も前のことで、僕たちができる環境に悪影響を及ばさないための最も簡単な方法だと思っています。自転車は、環境にも僕たちの体にも理にかなった選択です。僕は自分の理念を押し付けるのは好きじゃないんです。最高の教師はそれを模範を示すものだと信じています。「こうすべきだ!」と大声で言われると、僕は逆のことをしたくなるんです。 🙂

モノを作って売ることは、エコロジーの視点では矛盾しているかもしれません。でも僕は常に地球のことを考えながらやっています。僕にとってのルール #1は 「長く使えること」。人々が何年も愛用できるもの、使うほどに味が出るものを作るように心がけています。そのためには最高の素材と製造技術を使う必要があり、多少コストがかかっても、それが大切だと思っています。ありがたいことに、僕の考えを理解し、支持してくれる人が多いんです。

僕は自分の小さなガレージで、電力を使わずにスクリーン印刷をしています。時には大変なこともあるけれど、ちゃんと機能しています。インクは水性のみ。基本的にあまり多くのものを作らないようにしています。世の中にはもう十分すぎるほどモノがあるから。だから、少量生産…それも、たまにだけ。

自転車やタコス以外で、今夢中になっていることはありますか?

僕は、何かを「手探りでやってみる」段階がとても好きで、いつもその感覚を追い求めながら物事の仕組みを学んでいます。僕の人生は、直接的にも間接的にも仕事と密接に結びついていて、何かを作るときは必ず手を動かして関わりたいんです。だから、棚を作ったり、パンを焼いたり、スワップミートで古い雑誌の箱を漁ったりすることも、すべてが繋がっています。

また、たまに外で寝ることは、心にとってすごく良いことだし、目的地にたどり着く手段として自転車を使うのは、僕にとってはごく自然なことなんです。

好きな音楽のジャンルは? また、Tシャツを印刷するときや料理をするとき、ライド中にはどんな音楽を聴いていますか?

キッチンでもガレージでも、いつも音楽が流れています。最近よく聴いているアルバムは:

  • Harry Case – In A Mood
  • Video 2000 – Midnight Ride
  • Dizzy K Falola – Sweet Music Volume 1


日本を旅し、自転車で巡った経験があるとのことですが、特にお気に入りの思い出や、日本を再訪する際にいつも楽しみにしていることはありますか?

日本、また行きたい!!2009年に友人や初対面の仲間たちと一緒に、トラックバイクで東京から大阪まで走ったことがあります。携帯電話すら持っていなかったし、しかも季節は梅雨。ひたすら手探りで進むしかなかったけれど、それがまた最高に美しくて、「その場で何とかしていく」ことの醍醐味を思い知らされました。

東京では、和田さんという男性に出会いました。彼は、僕たちが無事に東京を抜けて旅を続けられるようにすることが自分の使命かのように動いてくれました。彼は2日間ずっと僕たちを導きながら一緒に走り、夜は橋の下の浜辺で共に過ごしました。彼が乗っていたトラックバイクは、亡くなった彼のお父さんのもので、かつて競輪選手だったそうです。旅の間、和田さんは本当に僕たちの「先生」のような存在でした。彼のおかげで僕は日本に惚れ込みました。今でもよく彼のことを思い出します。

SimWorksとの関係はどのようなものですか? その始まりにはどんな経緯がありましたか?

SimWorksとの付き合いは、もう10年近くになります。最初の出会いからすぐに意気投合しました!当時、まだGolden Saddleで働いていなかった頃から、時々食事を振る舞ったりしていました。その頃、SimWorksが初めてアメリカでポップアップを開催する計画が進んでいて、日本の小さな会社が、Nitto、MKS、Panaracerといったメーカーと共に、ユニークで考え抜かれたバイクパーツをデザインしていたんです。RieとShinyaがLAに到着したとき、Kyleが「Mickにケータリングを頼むべきだ!」と言ってくれて、彼らは思い切って僕に頼んでくれました。その週末は最高でした。そして数年後、またポップアップを開催し、「Gettin’ Hungry」ステムの100 Tacosバージョンをリリースしました。僕のバイクのほとんどが1インチのクイルステムだからです。

SimWorks / Circlesはいつも僕を支えてくれていて、関係が深まるにつれて、今まで過ごしてきた素晴らしい時間に感謝するばかりです。たくさんの楽しい、そして面白い思い出があります。ある夜、みんなで屋外で寝たいと思ったけれど、遠くへ行く時間がなかった時、「いい場所を知ってる」と友人の一人が言ってくれたので、大都会ロサンゼルスの中心を流れる川のそばにあるコンクリートの上で夜を過ごしました。まるで自然と都会が交差する象徴的な場所でした。星空を見上げながら笑い合っていた時、Shigeが僕に「これは普通のこと?それとも特別なこと?」と聞いてきました。答えはもちろん「両方」。僕たちは一緒に一生懸命働いて何かを実現している。でも、それが日常と溶け合い、仲間が気楽な人たちだと、すべてがとても自然で調和しているように感じられるんです。

Photos: Shige and Rie experienced an ‘Urban Camp‘ by LA River with Mick and GSC crew in 2019

LAのバイクコミュニティについて

長年いろんな街で自転車に乗ってきましたが、15年前にロサンゼルスへ移ったのは、ただ新しい環境で走ってみたかったからでした。今でも、ここで何か新しい発見があっていつも驚かされます。人生をかけて走っても、すべてを見尽くすことはできない――だからこそ、ペースを落としてもっとじっくりと味わうようにしています。 この街の魅力は、人々、文化、地形の独特な融合にあります。それが絶えず変化し続けるからこそ、ロサンゼルスは飽きることがない。そして、その魅力を味わうなら、自転車が最高の手段なんです。

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