道を増やしてみないか?
Doppo High Plains Drifter V2

自転車は、いつからこんなに細かく分類されるようになったのだろう。
ロード、グラベル、クロスカントリー、トレイル、ツーリング。
それぞれの用途に合わせて専門化され、自転車の性能は間違いなく高くはなった。
でも、その一方で、「この自転車は何に使うものなのか」を先に決めてから乗ることも増えたように思う。
Doppo High Plains Drifterを見ていると、そんな順番をひっくり返したくなる時がある。

この自転車の根っこにあるのは、まだマウンテンバイクというカテゴリーさえ存在していなかった頃の自転車。
古いクルーザーに太いタイヤを履かせ、山へ持っていく。
壊れれば直す。
必要なら部品を変える。
先に遊びがあって、その遊びに合わせて自転車が変わっていったはずだった。
High Plains Drifterのツイントップチューブや独特なフォークを見ると、確かにそんな時代を思い出す。


けれど、Doppoがやりたかったのは昔の自転車を正確に再現することではなく、
Boost、スルーアクスル、ディスクブレーキ、ドロッパーポスト、29インチタイヤ。
使うべきところには、現在の規格をきちんと使う。

そのうえで、今の自転車から少しずつ失われつつある、おおらかさやゆとりを取り戻すこと。
古いものを懐かしむのではなく、良かった部分を今へと持ってくること。
High Plains Drifterは、そんなSimWorksらしい考えでつくられている。
ポートランドでつくるということ

High Plains Drifter V2は、オレゴン州ポートランドで製造されている。
製作を担うのは、今回もOscar Camarena。
かつてCielo by Chris Kingのフレーム製造にも携わり、現在は小ロットのフレーム生産を手掛けるビルダーというべきだろうか。


V2は、彼の手によって一本ずつ、丁寧につくられている。
大量生産のフレームと比べれば、ずいぶん遠回りな方法ではある。
ツイントップチューブも、独特なフォークも、もっと簡単な形に置き換えることは可能なのだが、
SimWorksとは、効率だけを理由に形を決めるブランドではないことは理解してくれているはず。
乗ったときにあなたがどう感じるのか。
何年後に見てもまだ素敵だと思えるか。
壊れたときに正しく直せるのか。
そして、この道具を使うことで、乗り手の行動が少し変わるのか。
Doppoというラインには、そのような判断が素直に表れているのだと思う。
High Plains Drifterも同じ。

必要以上に飾るのではなく、必要だと思ったものを、必要だと思った方法でつくる。
結果として少し見た目は変わった自転車になった。
それくらいの意味づけが、このバイクには似合っているのかもしれない。
何に使う自転車なのか

この自転車を見て、「何用なんだろうか?」と思う人もいるとも思う。
でも、たぶんその質問自体が、この自転車にはあまりフィットしないかもしれない。
街を走ってもいいし。
林道へ入ってもいいし。
キャンプ道具を積んでもいいし。
シングルトラックを走ってもいいし。
近所のコンビニへ行ってもいいのだから。

もちろん、専用機と比べれば、それに優れているかと問われたときには少し答えに困るのだが、
でもHigh Plains Drifterが目指しているのは、そこではない。
何かひとつを極めるのではなく、できることを減らさないということ。
乗る前から遊び方をあまり限定しないこと。
今日は舗装路だけのつもりだったのに、途中で見つけた未舗装路へ入ってみたくなること。
そういう予定外を受け止められることも、立派な性能だと思うのだから。





SimWorksは昔から、パーツひとつにしても「何グラム軽い」「何ワット速い」という話を極力避けてきた。
それ以上にその道具、パーツによってどんな遊び方が生まれるのかを考えてきたつもり。
High Plains Drifterは、その考え方をフレーム一台にしたような自転車なのだろう。
速くて、軽い自転車は、目的地までの時間を短くしてくれるだろう。
でも、面白い自転車は、道そのものを増やしてくれることなんだろう。

High Plains Drifterに乗ってみたいなら、「この自転車なら何ができるのか」と考えるより、
「今日はどっちへ行こうかな」と考えてほしい。
そんな身勝手な思いから生まれた自転車なのだから。











