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2017/2/13

[Bike 伊豆 between you and me] 着歴とririとSAS。

そもそもの始まりは、1994年夏。

ロベルト・バッジョがワールドカップ決勝、対ブラジル戦でPKを失敗した頃のこと。

小学6年のぼくはリーバイスのカタログに出会い、501というエターナルを知ったのでした。

 

地元での学生時代はお小遣いにはほぼ手を付けずに貯め、ある程度貯まると伊東から原宿への電車旅。

ウェンディーズでハンバーガーを食べながら正午を待ち、古着屋やセレクトショップを巡る。

高校卒業後は文化服装学院スタイリスト科に進学。

洋服欲しさに借金を拵えるようなことはありませんでしたが、生活費を切り詰めてでも洋服を買い漁り、代償として粗末な食事に体調を崩し肺炎を重症化させて入院したこともありました。

 

そんな着歴(着衣履歴)を経て現在のぼくがあります。

とにかく洋服に全てを捧げていた頃の名残もあって、洋服は必要な数だけ手元にあれば良しと思うようになった今でも、細かなディティールやギミックが気になってしまうシムワークス・クロスカントリー・レーシング所属、蛯子裕樹の話にお付き合いくださいませ。

 

riri

古着をdigしていた頃はTARON、CONMAR、CROWNなどのビンテージのジッパーを素通りできなかったものです。

文化服装学院を卒業して、色々なブランドの哲学と宇宙に触れる中で知ったririというジップメーカー。

スイスにおいてイタリア語のみを公用語とする唯一の州、ティチーノにて創業されたメーカーです。

 

ririのジッパーはスライドの滑らかさこそ世界最高の性能とは言い難いにしても、歯が外れたり割れたりするというトラブルには滅法強いのです。

 

そしてririの優れる点の最たるはそのデザイン。

もうね、バキバキにかっこいいのです。

注視しなければそのデザインに気付くこともないのですが、やはり脱ぎ着するたびに触るパーツ。

寒ければ閉め、暑ければ開け、洋服の機能の根本とでも言うべきパーツにさえ幻想を押し付けることで、満たされることなどないと知っていながらも理想を少しずつ完成させていくぼくはとても面倒くさい人間ですが、ririが与えてくれる安らぎはとても大きいのです。

要するに、ririが好きなのです。

タフだし、かっこいいから。

 

ririのジッパーを使いたいアパレルメーカーは多いのですが、やはりどうしてもネックになってしまうのはその価格。

国内のジッパーの5倍の価格だとか、洋服として完成させた時に3割ほど定価が高くなってしまうだとか、そういう曰くも付く上に、加えて納期が安定しないという舶来品あるあるも従えて、面倒くさい種類の人間たちを更に魅了することとなっています。

 

Search and State

昨年秋のこと。

エビコはマダンテを唱えた。

MP(マネーポイント)を全て使い果たすことを覚悟の上で、サーチアンドステイトのウェア群を買いそろえました。

宿屋に泊まったとしてもMPは回復しませんが、引き換えに得た安らぎと機能に心躍りました。

 

サーチアンドステートはririのジッパーを採用しています。

コストを抑えるためにメインのジッパーのみをririにするということはありません。

全てのジッパーがririです。

もうぼくなんかイチコロです。

マタタビ浴びたタマ(=^・^=)のように。

↑これ、回文です。

 

サイクリングウェアに許された領域をBoooonと超えちまって、チョイ悪でありながらもインテリ系のエッセンス漂うデザイナーブランドであるかのような佇まいが着る者を強くします。

アン・ドゥムルメステールが漂わせるそれに似てるとも思うのです。

 

2月のある日、早朝に寒がり嫌がる妻でしたが、無理言って撮ってもらった写真。

こうしてサーチアンドステートで身を固められる喜びに寒さも吹っ飛ぶ、ということはありませんが、情緒的にも機能的にも寒さを和らげてくれることは間違いありません。

 

機能的なお話についてはプロダクトページをご覧頂きたく存じます。

書かれている能書きの通りだと思いますので。

付け加えたいのはビブショーツについて。

ぼくが購入したのはS2-R

これまでに穿いたことのあるビブショーツはサドルと尻の間でグネグネ動いて、返ってペダリングの妨げになっているんじゃないかと思ったこともありました。

しかしS2-Rはまるで違います。

サドルと尻を繋ぎ止めます。

さながら入れ歯安定剤ポリデント。

肌触りも異次元です。

 

これまでの人生を振り返っても買ってよかったものランキングのトップ3に入りますが、惜しむらくは無難にブラックを選んでしまったこと。

シムワークスのチームジャージに合わせることをイメージするとどうしてもネイビーの方がかっこいい。

若いころは何を買うにしてもブラックは選ばなかったものですが、いつの間にか無難という道に逃げるようになっていたようです。

加齢を恐れてはいませんが、加齢に比例した思慮深さと若者が持つ勢いというものの両方を兼ね備えなくてはならないなという境地に至ることが出来たとすれば、良い教訓です。

またS2-Rを買います。

次はネイビー。

 

text : Hiroki Ebiko / SimWorks XC Racing [Blog] [Instagram]