FEATURE
2015/5/7
Who build your bike?

Text by Shinya Tanaka/Photo by Rie Sawada

NAHBSと言うハンドメイドショーには2種類のタイプのビルダーがいると思っている。
 
1つ目は出来る限り多くのオーダーをもらう為に(もちろん誰でもたくさんのオーダーは欲しいのだが、あるひとつのポイントを超えると正直困った事態に陥る。)一生懸命にNAHBSのコンペティションに参加してマーケティングをするタイプと、もう既に過去のNAHBSで名が売れたのでもちろんオーダーも欲しいけど、それ以上にソーシャライジング ( socailizing : おつき合い。社交。)の為にゆったりと参加する人がいるという事である。
Mike DeSalvoは過去に3度もBest Tig Welder賞を受賞したことがあり、今はNAHBSのコンペには参加せず、第1回目から参加しているこのNAHBSの生き字引としてブースを構え、古くからの知り合いやニューカマー達と会話し、そして次に繋げるアイデアを頭の中で描いているのだ。

ちなみに今回のNAHBSの僕のベストバイクはこのDeSalvoのGravel Roadなのだが(もう一つ手前味噌で付け加えるのなら僕がオーダーしたバイクである。)これは自転車遊びの為の今後の良い見本を示していると思う。
 
色々な種類の自転車が出尽くしてきて、さぁ今何をして遊ぼうかと言うけっこう基本的な難問が突きつけられていると思われるこの世界で、ある程度の準備が必要とされるレースやロングツーリングではなく、ただ瞬間的な気分の中で自分の所有する小気味の良い自転車に跨がって、好きなところに好きなように行く。そしてそれはたとえTarmacとGravelが混ざりあったとしても一向にかまわないライダーがいて、それに耐えられるモノが必要であり、そこにたどり着きたいという意思があれば十二分に楽しいものとなり得るのだろう。
 
そしてそのような遊び方をしている、いたって真っ当なライダーが今何を求めているかという単純な答えをやはり多くみせてもらえるのもアメリカという国の現状だと思う。(しかしながら70年代の日本での自転車の遊び方、つまりはパスハンティングやツーリングが主体だった時代がちゃんとあり、やはりそれはレース以外での自転車の楽しみ方としては正しいのである。そしてそれは中島みゆき的で時代がすごく回っている実感となってかえってくる。)そんな声に先回りしてモノをつくって紹介できるという事もハンドメイドの世界の楽しさでもあると思っている。
NAHBSというちょっとしたお祭り気分の余韻を持ちつつ、僕らはカリフォルニアからオレゴンに抜ける為にI-5を直進してDeSalvoのすむ町Ashlandに向かった。
 
僕がこうやっていつも長い道中をひたすら進むのは訳がある。
それは何か1つでもユニークなものがあるのなら、それは現場に行って、見たり、聞いたり、試したりしなければ絶対に理解できないという事を経験的に知っているからだ。だからひたすらハンドルを握るのだ。そしていつも進むべき道はNAHBSのあとに開かれていると信じているからでもある。
何度もくどいように言うのだけどもMikeは天才である。たったひとりで年間100本のフレームを製造して、50本以上のOEMでのフレーム溶接を行ない、更にUBIという自転車の専門学校でTIG溶接のクラスを何度か受け持つ。
 
正直って意味不明である。どんなスピードで、どんな手順で行なうとそれが可能になるのか。そしてそれを頭の中でオーガナイズしている事実は本当に無頓着で無計画な僕をすごく嫉妬させるのである。しかもその自転車が素晴らしく気持ちのいいモノにひとつひとつ ”完全” に仕上げるのである。それは目的に応じて行なうチュービングの選択眼や溶接技術、さらには彼の見た目からは想像を絶するほどの美意識を持って取り組むモノ作りの集大成であり彼自身の存在意義だと僕は胸を張って伝えたいと思っている。
現在のDeSalvoの特徴的な変化は2期前より極端にチタンに対するオーダーが増えている事であろう。
 
多くのライダー達が買い易いモノで自転車というモノに触れ、体感して愛してしまったが故に分かる本質。つまりは ”愛機” をどのような形で手にするべきかという事。そして彼のチタンフレームのオーダーの多くは現在の主流であるマスプロダクション製のカーボンバイクからの乗り換えが多いと言う点も見逃せない事実である。
 
以前にも何処かで伝えた事があると思うのだが、 “Who build your bike?” という極めて真っ当な設問に今きちんと答えられ、もちろんちゃんと使用して、そして純粋に愛することができる ”自分だけのモノ” に出会うという事は、何事にも代え難い “自転車乗り” としての究極な幸せなのではないのだろうかとNAHBSに行って毎回たどり着く僕のひとつの結論であり、こんな気持ちになってくれるライダーがもし増えるのであるならば、僕もあんなに長い時間、僕の本望じゃない “ハンドル” を握るってことも報われるのかなと思うのです。
 
以下続きます。

 

DeSalvo – デサルーヴォ カスタムサイクル ( http://www.desalvocycles.com/ )
– プロダクトサンプル [ FlickrのDeSalvoセットをご覧ください。]

– DeSalvoプロダクトページ
https://sim-works.com/desalvo

– DeSalvoのお問合せ、オーダーのご相談はメールでご連絡下さい。
info@sim-works.com


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