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2015/3/14

[SEVEN] セブンのチタニウム技術&製造方法論 (3)

Text by SimWorks / Photo by SimWorks

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今回のSEVEN Tipsはより深く、チタンフレーム製造時に使われる
チタン合金の種類に対し、セブンからの回答編となります。
引き続きセブンのチタニウム技術&製造方法論をお楽しみ下さい。

 
 

チタンクオリティー

 

チタンチューブの品質や強度は、スチールのそれと同様に様々だ。そのクオリティを判断する上で、どこでどんな方法で作られたのかがとても重要なポイントとなってくる。高いレベルで品質が管理されたチタンチューブを用いて出来上がった製品は、当然のように寿命が長くなるのである。
チューブの加工行程において、チタンチューブの最終品質に影響する要素が3つある。1つ目は分子粒子配向で知られているテクスチャー、2つ目は内側と外側の表面に対する仕上げ、3つ目は化学反応によって起きるチューブ表面の欠陥の有無である。
チューブのテクスチャーは可能な限り一番高い疲労強度(耐久性)を得るために最適化されるべきであり、同じく表面がスムーズで無欠陥なものは耐久性が高く、結果、長期間にわたり使用可能なものとなる。

 

チタンチューブの内側と外側における表面は、加工行程において仕上がりのクオリティが決まる。表面に現れる亀裂などの欠陥がクオリティに及ぼす影響は、チタンは鉄よりもかなりデリケートである事が証明されており、つまりは欠陥の無い表面をもつチューブがより長い寿命を持つことを意味する。また、自転車用チタンチューブの内側は、疲労耐久性といった点において特に重要な役割を果たしている。あまりにも薄い肉厚のチタンチューブを使用した場合の殆どは、外径と内径において相対的な圧縮と張力がかかり、そこにミクロ単位の亀裂が発生しやすくなり、チューブ自体またはジョイント部が破損につながる可能性が高い。また、内側のテクスチャが外側より荒い場合には、往々にして内側から亀裂が生じ始める。

 

表面の傷や薬品による傷などは、チューブの善し悪しを絶対的に決めてしまう。これを唯一防ぐ方法としては、フライス盤を用いた品質管理をしっかりと行なう事である。

 

個々による要因、もしくはこれらの要因が重なってしまうと、3-2.5のチタンシームレスチューブにおける寿命に大きく影響を及ぼし、それに続き加工後における仕上がり品質に対し多大な影響が出てくるのである。

 
 

チタンの種類

 

ピュアチタン、CPと商業的に呼ばれる非合金チタンに加えて、今日、自転車産業において共通して使用されている合金が2つある。それが 3AL-2.5V6AL-4V である。

 
 

3AL-2.5V合金

 

3-2.5チタンは3%のアルミニウム、2.5%のバナジウム、そして94.5%のピュアチタンから成っている。チタンフレームにはやはり高品質な3-2.5シームレスチタンチューブを用いて製造するのが一番だとセブンは考えている。耐久寿命に優れ、性質に一貫性があり、成形性も高く、そして耐腐食性を持ち合わせている等々の性質は、3-2.5チタンがとても優れたバイクフレーム用の素材かという事を如実に表している。

 

近年のアメリカにおいてチタンフレームと呼ばれるものは通常、3-2.5チタンチューブを使用して作られ、米国自動車技術者協会によって交付されているASTM B-338と呼ばれるエアロスペースグレード、またはスポーツグレードなどが規格として知られている。ASTM B-338は油圧チューブのためのエアロスペース(航空宇宙材料)規格に適合している。化学薬品や機械的な部分における使用に対しての基準値がそこまで厳しくないスポーツグレードは、エアロスペースグレードのものと比べ比較的安価とされている。

 

とあるチタンビルダーたちは、余った素材や『くず』程度のものを使用し値段を下げて製造しているのだが、そのどちらもエアロスペースグレードでも、スポーツグレードでもない。なぜなら『くず』には品質証明書などはおりるはずもなく、劣った品質のものに証明などする必要すらないからである。

 
 

3-2.5チューブの品質規格

 

アメリカにおいてチタンフレームに使用されている3-2.5チタンは通常3つのグレードに分けられる。

 

① 3-2.5 AMS規格 105
この材料は、油圧チューブに使用が可能とされるエアロスペース規格に適合しており、ボーイング747等の大型旅客機に使用されているものと同じ材料である。このAMS 105の材料を工場から直接購入する際には、バイクデザイナーは制限のない直径やチューブの厚さを選択できることになっているのだが、現実では大きなサイズのミニマムオーダーが存在し、それを製造するにも時間がかかる。つまり、大きなチタン加工業者、たとえば私たちセブンのようなサイズの会社のみが理論上その特別発注が可能になるのである。

 

② 3-2.5 スポーツ規格
スポーツ規格のチューブは加工工程をエアロスペースグレードより少なくする事により、わずかに価格が安くなっている。しかしながら弊害として、その加工行程を減らし、つまりは安価にすることによって、素材の成形性や内側と外側における表面のテクスチャバランスなどに悪い影響を与えてしまう事が実際にある。

 

③ 3-2.5 『くず』
この素材についてはエアロスペース規格、そしてスポーツ規格にも適合しないものである。この素材はただ単にエアロスペース規格、そしてスポーツ規格の製造過程から『くず』として出た少量の余り物を呼称する。このようなくずを使用するにあたっての問題は、そこに証明書もなければ仕様書もないことである。なので購入者はこの素材における構造上の異常やその品質を見定める事は決して出来ず、それが意味するものは購入する意味が全く無いということである。しかしながら『くず』を使用してチタンフレームを製造する人達もいることを知っておくべきでもある。

 

セブンのオリジナルチューブは上記の3つに当てはまることのない4番目のカテゴリーに分類される。なぜならば、上記で述べたようなチューブ規格とは全く異なった品質規格にて製造しているからであり、その仕様は、AMSスペック 105とも異なり、真直性や表面のテクスチャに対してより厳しい耐性を基準が設定されており、AMSスペックにおける最小限の張力や耐力強度を超えて製造、品質管理されているからである。詳しくは次回の「セブンの供給するオリジナルチューブセット」にてより詳しく記述する。

 
 

6AL-4V合金

 

6%のアルミニウム、4%のバナジウム、そして90%のピュアチタンが合わさった合金であり、この6-4チタンはセブンにとってある特殊用途においては好都合な原料の性質を持ち合わせている。例えばセブンではドロップアウトを代表とするチタンフレーム用のスモールパーツをこの素材を用いて作り上げている。ドロップアウトに対して6-4チタンが最適であるとさせている性質のうちの一つは、その頑丈さにある。しかし、この頑丈さがチューブを作る上で邪魔になる事も事実である。3-2.5チタンチューブを作り上げる技術をそのままに6-4チタンチューブに適応させると、その製造に用いられる機械や道具がすぐにすり減ってしまう為に価格が非常に高くなるという欠点を持つ。それに付け加えてチューブの内側と外側の厚さにおける精密度、同心度、そしてその仕上がり品質がとても限られてしまうのである。そして今現在、アメリカのどこの工場もシームレス6-4チタンチューブというものは提供していない。つなぎ目のある、溶接された6-4チューブを提供している工場は存在するが、下記に述べる2つの大きな問題により、セブンはこの方法で製造されたの6-4チタンチューブを用いてのフレーム生産はしていない。

 

1番目の問題として、つなぎ目のあるチューブは6-4チタンシートをチューブの形にする整形され、つなぎ目を溶接しながら作られる点だ。その長い溶接箇所のどこかには、潜在的な欠陥があると考えたほうが無難である。このつなぎ目はストレスのかかる部分とかからない部分を必ず作り出してしまう。なぜなら溶接部分はチューブ自体の肉厚よりも必ず分厚くなり、不整合をそこで作り出してしまうからである。

 

2番目の問題は、6-4チタンシートというものが、シート(板状)で使用するために作られたものであり、チューブを作るための材料ではない点にある。その素材をチューブにしようとするならば、グレイン構造が早い段階において崩れてしまう可能性が高い。事実、6-4チタンチューブは繰り返し曲げられる動作をすることで、予期しない段階で壊れてしまう。独自に行なわれた金属疲労テストにより、6-4シートで作られたチューブは3-2.5チューブが持つような寿命は兼ね備えていないということが明らかになっている。

 

最近では、シームレス6-4チタンチューブがアメリカ国外から自転車産業に少しずつ入ってきている。しかし2~3種類だけの長さを持つインターナルバテッドチューブで、しかもそのサイズにも制限があるというものしかない。チューブの直径、厚み、そしてバテット部がどこにあるのか、といった点を基にフレームはデザインされているので、このような限定された素材では、最適な走りを可能にし、様々なチューブを必要とする現代におけるハイエンドなチタンフレームを作り上げる事は不可能である。付け加えるならば、インターナルバテットよりも、エクスターナルバテットのほうが好まれる理由についてが、以後に記載する予定の「製造概要」内にある、チューブのバティング加工工程のセクションに詳しく書くことにする。

 

 

あるビルダーは、限定された中でも6-4チューブは3-2.5チューブと掛け合わせる事が可能であり、それによってさらに良い自転車ができると話し出すことがある。しかしながら6-4チューブを3-2.5チューブとに掛け合わせ作られるフレームは、重量面においても全く強みにならないのが事実であり、さらに、最適な硬さと強さを持ち合わす事もできないというのが現時点での結論である。6-4チューブの高い曲げ剛性は、低いねじれ剛性によって相殺されしまう上、現在使用されているバテット技術も耐久強度に対して全くもって評価はされていないのが現状だ。なので6-4チタンチューブを使用するチタンフレームとは、ただただコストがかさむ金食い虫としか評価することが出来ない。

 
 

CP(工業用ピュアチタン):ピュアチタン

 

工業用ピュアチタンをフレームに使っているビルダーは少ししかいない。工業用ピュアチタンは、高く見積もっても3-2.5の半分の強さしか持ち合わせていない為、この材料を使用したフレームは、同等の強さを持たせるために3-2.5フレームよりも重くさせなければならない。高品質のスチールフレームで使われているスチールでさえも、工業用ピュアチタンより高い強さを持っているのが現実だ。結果的に工業用ピュアチタンで作られた製品は、仕上がり品質的にとても低い。この素材は、腐食抵抗を重要視する産業用途に使われるのが現状ではほとんどであり、それはもちろん自転車フレームを作るためでは無い事は確かである。

 
 

3-2.5チタンは何にも負けることはない

 

航空宇宙(エアロスペース)・防衛産業(ミリタリー)が材料技術開発に力を入れていたことは歴史から見て取れる。そこから3-2.5チタンが唯一確かなチタン合金材料として選ばれていたことがわかる。現在、この産業界において6-4チタンチューブは求められておらず、故にアメリカ国内では特に生産もされていない。もしかしたらある日、6-4チタンチューブにも様々なサイズのチュービングがリーズナブルな価格にて提供が開始されるのならば、自転車産業よりもはるかに大きい規模の業界がそれに対し関心と購買力を持ち始めるであろう。しかしながらそのような兆候は現在において全くもってない。

 

付け加えて、3-2.5や6-4といった強いチタン合金に頼っているハイテク産業においても詳しく調査をしてみたところ、小さな直径の6-4チタンチューブはどこも使っていない事も分かった。その理由は上記であげた理由に他ならないのだが、チタン工場に尋ねてみても、シームレス6-4チタンチューブが様々なサイズで販売を開始されるのはほど遠い未来であるという回答であった。