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2017/12/4
[Bike 伊豆 between you and me] 野辺山スプラトゥーン


 
この2カ月ほどのことなのだけど、殆ど毎日の日課として行っていることがある。

4:20の起床後のスプラトゥーン2だ。

それを済ませてからでないとランニングなり筋トレなりを始めることが出来ない。

 

Rapha スーパークロス野辺山、この日の朝であっても然り。

朝というよりもまだ夜中の1:50にアラームが鳴り、ぼくは任天堂Switchを起動させスプラトゥーン2をプレイ。

ここからぼくのシクロクロス開幕戦が始まるのだ。

1マッチだけプレイするも、敗戦。

これが負の連鎖とならないことを強く祈る。

余談だが、現在はスプラトゥーン2をプレイしたいのを堪えてこのレポートを書いている。

 

野辺山シクロクロス。

国内屈指の集客を誇るシクロクロスレース。

まさかぼくのシクロクロス本格参戦がこのような大舞台になろうとは。

未だドロップハンドルにも、MTBと比べると遥かに細いタイヤにも慣れていない状態である。

 
 

 
出来るだけバイクに触れる時間を作った。

シクロクロスの基本練習である8の字スラロームをひたすらに繰り返した。

繰り返すほどにMTBとの違いに戸惑うような気もしたが、バイクに慣れる手段など他にはなかった。

 

新しく何かを始めるようとぼくらが考える時、つい想像してしまうのは成功や達成である。

より良いイメージを抱くのはとても大切なのだけど、思い描く成長と現実とのギャップを感じる時、成功のイメージは幻想となり得る。

根暗で陰気なぼくはこの一連を理解しているつもりだ。

だから腹にくくるのはただ一つ。

めちゃくちゃ楽しんでやるぜ!Yeah!

 

こちらの野辺山対策も怠ってはならない。

車の冬支度というのは妙にわくわくする。

愛車ジムニーはスチールホイールとスタッドレスタイヤに換装。

元々快適性の乏しい車であるが、更に乗り心地は悪化。

これなら運転中眠気に悩まされることも少なくなるのではないかとも考えたが、睡魔は劣悪な乗り心地をいとも簡単に跳ねのけてぼくの上に舞い降りた。

ノンストップであれば3時間と少しのドライブであるが、4時間かけて野辺山に到着。

 

夏場のマウンテンバイクのレースであれば、朝日の到来が世界に色彩を徐々に灯していく中を運転することになるのだけど、冬場のシクロクロスではそうはならない。

出発から到着まで真っ暗だ。

この点については夏場のレースの方が気持ちがいい。

 

野辺山の朝は風が強かった。

吹き荒ぶ-4℃の凶器。

伊豆育ちを車の中に追いやるには十分すぎる破壊力だった。

あまりに狭い車内で持参した全ての衣類を何とか着込み、名古屋からの本隊との合流を待つ。

 

本隊との合流を果たし、チーム拠点の設置、そして身支度と機材の準備を整える。

C4は7:45に召集、8:00にレーススタート。

とにかく時間がない。

試走を一周だけ済ませたが、ウォーミングアップはままならない。

 

召集エリアでスタートコールを待つぼくのビブナンバーは612の2列目スタート。

しかし若いナンバーを持つ選手が相次いでコールに間に合わず、フロントローをゲット。

ぼくのコンディションはというと、膝を少々痛めてはいたが、数カ月に及びぼくを悩ませ続けた足の親指のウオノメを除去することに成功したばかりということで、トントンということになる。

やれそうだと思えた。

 

しかし震えが止まらない。

寒さで震えているのか、かつて感じたことないほどの緊張に震えているのか、自分でもどちらかわからない。

ぼくのMTBの主戦場である王滝100kmでは、6時間近く続く痛みと苦しみを思うが為に、熱気の中に仄かな憂いを帯びたスタートとなるのだけど、僅か30分で全てが決するシクロクロスの下位カテゴリーは漂う空気が違う。

誰かがぼくの肩に手を置こうものならぼくの体はバラバラに崩れ落ちてしまいそうなほど緊張していた。

ぼくの後方には約100人の選手たち、そしてぼくの見据える先には誰の背中もなく、直角の左コーナーが選手が雪崩れ込むのを待ちわびている。

 

スタートの号砲が鳴る。

ペダルはクリートを拒んだが、大きな遅れを取ることはなかった。

3番手で最初のコーナーを抜け、1周目の後半で先頭に立つ。

慣れない。

トップを走るという状況に加え、新しいバイク、新しいウェア、おまけに新しいシューズ、あらゆるものに慣れていない感覚に大きな不安を覚えるのだけど、すぐ後ろには2名の選手の気配を感じる。

差を広げたい。

差を広げてあらゆるものに慣れていない感覚が呼ぶこの不安感についてゆっくりと考えたいという気分だった。

 

バイクはぼくの意に従ってはくれなかったし、更には足元もおぼつかない。

シケインを超えた後のランで滑って転んだ。

卓越したドジョウすくいの後ろ姿にも見えるのだけど、ぼくにドジョウすくいの心得はない。

 

ドジョウをすくったり、バイクの扱いに戸惑ったりしているうちに、トップの座を明け渡すこととなってしまった。

舗装路の登りでもパワー負けしているようだった。

あらゆるものに慣れていない感覚が呼ぶこの不安感についての考察は一旦諦めるしかない。

楽しもう。

そして何としても2位を死守しなければ。

 

3位の選手はTeam Blue Lugプサン選手だった。

我がSim Works CX RacingとTeam Blue Lugはライバル関係にあると言える。

双方の関係者の応援が大地を揺るがす。

ぼくの存じ上げない方までもがぼくの名を叫んでくれた。

応えたいと思った。

全力で楽しみ、また2位を死守するという形で。

 

登りでぼくが数秒突き放し、その後の泥区間で再び追い付かれるというパターンを繰り返す。

ゴールスプリントで決着を付けなければならないようだ。

変速がないバイクでスプリント出来るのか?

やらなければやられる、それだけだった。

無心で踏んで、そしてギアが足りなくなると回し狂った。

 

大舞台で2位を獲得とすることが出来た。

2位/87人

プサン選手との激戦を制することが出来た。

つい数分前まではお互いに絶対に譲れないものを守ろうと、いわば敵対の関係にあったのだけど、フィニッシュラインを越えたその瞬間にぼくらは大きく芽生えたものに気付く。

友情だ。

プサン選手の存在がぼくを存在させた

プサン選手に心からお礼を申し上げよう、ありがとう。

 

即日昇格されるとのことで、翌2日目は早速にC3を走ることになる。

最後尾スタートだが、一つでも前に進みたい。

 

1日目はシングルスピードカテゴリーにもエントリーしていた。

14位/49人

 

先のプサン選手との激闘の果てに得たものがとても大きく、2レース目のシングルスピードカテゴリーではどうしても追い込み切れずに終わってしまった。

とは言え、収穫はある。

バイクに更に慣れることが出来、コースコンディションは短時間で見違えるほど変化していくことを知ることが出来た。

 

その後、仲間や知人の応援に声を枯らし、Team Blue Lug主催のナイトシクロクロスにお邪魔し、宿へチェックイン。

 

Day 2はC3の最後尾からスタート。

ビブナンバーは666。

何とも言えない不安と恐怖を覚える。

レースのスタート時間はC4よりも後になる為、凍り付いていた地面は日に照らされて溶け始めていた。

 

試走はしなかった。

二日酔いに苦しんでいたから。

約14カ月続いた禁酒という遊びは今年7月頃に一旦打ち切っている。

復帰後はハードリカーを好んで飲むようになった。

今回もテキーラやウィスキーを頂いてしまった。

早めに就寝したのだが、夜明けのまだ遠い3時に目が覚めてしまい、その後はあまり寝付けず朝を迎えていたのだ。

 

夜明けを待つ間、スプラトゥーンが恋しかった。

経済を評論することを生業としている人の言葉を思い出した。

任天堂スイッチの、据え置き型にも携帯型にもなるという機能は必要ないという言葉を。

まだスイッチがコードネームNXと呼ばれていた発売前のことだったのだけど、ぼくはその言葉にぶっ飛んだ。

そもそも任天堂は必要なものなど作ろうとしていない、任天堂は遊び方の提案を示してくれているに過ぎないというのに、必要ないと切り捨てる評論家の言葉にぶっ飛んだ。

評論家の言葉は、任天堂が示す導きやヒントやきっかけを何一つ生かすことが出来ないと露呈しているようなものだった。

ちなみにぼくは自転車における変速という機能の素晴らしさを理解したうえでシングルスピードに乗っているつもりだ。

変速はリア8段もあれば十分とは思わない。

多ければ多いほど素晴らしい。

あとは使い手次第だ。

 

レースに戻ろう。

C3は50~60人の出走のようだった。

そしてぼくはその中の最も後方に並んでいる。

とにかく無事故で最初の混戦を抜け出したいと願う。

 

レーススタート。

当然だが酷い渋滞だった。

無理にこじ開けて前に出るようなことはせず、安全を確保したうえで着実に上がっていく。

話は逸れるが、国民一人あたりの換算で一年のうち30時間を交通渋滞に捧げているという。

また、高速道路では全ての車両が40メートルの車間距離を維持すると理論上では渋滞は絶対に起きないという。

 

渋滞はやがてなくなった。

まだかなり後方を走っていることは理解できた。

 

二日酔いの割には体はよく動いていた。

舗装路の登りではパワーで周りの選手を圧倒することが出来た。

舗装路を登り終えてからの泥区間はシングルスピードのギア比では乗車不可能であろうと判断し、バイクを担いで走った。

ぼくはランが得意である。

ぼくと同じように担ぎを選択する選手もあれば、乗車で無理やりクリアしようとする選手もあったわけだが、周囲の誰よりもぼくが一番強かった。

舗装路と泥のランでは毎周回大きく前に出ることが出来た。

その他のセクションでも少しずつ前走者をパスし、前日よりもバイクの扱いに戸惑うことも少なくなっていた。

最終的には14位/57人

表彰台は遥か先だが、今回はこれで十分だと考えている。

何より楽しかった。

スプラトゥーンに例えるなら、目には見えないぼくのインクを野辺山の地に塗ることが出来たはずだ。

 

八ヶ岳の稜線は空との境をくっきりと示していた。

文字通りの一筆書きのように一本の線で。

この地域に暮らす人々にとっては比較的穏やかで温かい二日間だったようだが、ぼくの比較対象は伊豆。

芯まで凍えた。

しかし不思議と不快な寒さではなく、心地良ささえ覚えた。

あの荘厳な景色がそうさせるのだろうか。

白い溜息が宙に揺れる。

また来年訪れようと心に決めた。

 

 

Photo By UKI nishihara

今回はチームでの参戦だったが、敢えてぼく個人の競技レポートに留まらせていただく。

ぼくらSim Works CX Racingの活動はインスタグラムハッシュタグ #simworkscxracing を追跡願いたい。

また差し支えなければチームメンバーのインスタグラムをフォローしていただけると幸いである。

ぼくらが自転車に乗る理由、ぼくらがシクロクロスというスポーツに身を投じる理由、ぼくらがシムワークスの看板を背負う理由が伝わるはずだから。

 

text : Hiroki Ebiko / SimWorks XC Racing [Blog] [Instagram]

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