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2014/8/11

-Monday Selection- 2014 夏旅事後録 "前編"

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堅苦しくなく言葉を生み出そうとするとどうしても喋る方を選択してしまう癖がある。
当然当人は話したつもりでいても、決してみんなに伝わるわけではなく、あぁしまったと嘆くことは多数なわけなのですが。。。
そんなこんなで伝え忘れていた私のアメリカ出張、7月初頭よりアメリカにてほぼ1ヶ月を過ごしたわけなのですが、月日というものはやはり恐ろしいほど早く、あれよあれよという間に過ぎ去っていったのです。

 
 
まず向かったのはいつもの寄港地サンフランシスコでした。
その街には文化と表現するにはもう恥ずかしすぎる、それ以上の歴史が刻まれ始めています。
そんな街に再び意を決して我々は向かったわけでした。


 
New SimWorks Dealers in USA
 
-Box Dog Bicycles-

494 14TH STREET, SAN FRANCISCO CA 94103
TEL 415-431-9627
boxdogbikes-3.myshopify.com

 

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あの懐かしきMASH旋風が吹き荒れていた8年前のサンフランシスコ。 
個人的に憧れでもあったこのベイエリアを代表する文化発祥地に一人で降り立ったことがとても懐かしく思います。 
ツテの全くない僕を暖かく迎え入れてくれた当時のMASHクルーでもあった洋平くん。彼に借りた自転車の前輪をパクられるという醜態を晒した僕は、このBOX DOG BIKESのエントランスを偶然に近い形でくぐりました。 
そこにはなんというのか日本ではその時まで感じることがなかった自転車屋としての”活気”に満ち溢れていて、あぁやっぱり何か違うな、こちらにやってきて本当に得るべきことがあるのだろうとその時直感的に感じたのです。 
中古の26”の前輪を35ドルで手に入れて少し店員と話をしてみるとこの店がコープ(生協)の形態で運営されているということを伝えられ、さらに鳥肌が立ったことを鮮明に覚えています。 そしてここには長年僕が求めていた自転車修理屋としての理想形があり、そこで働く人々は自信の存在価値を理解しながらその役割をテキパキこなし、そしてふざけあいながらも進んでいく仕事を見ているだけでもう何時間でもココにいられるなって思えたほどでした。

 

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現状は7名のオーナーと2名のパートタイマーにて構成されているらしく、常に4〜5名のメカニックが動き回っています。
また商品の構成力は抜きん出ていて、全米の自転車屋を多く回りましたがここを超える店というのは少ないと思っています。 
個人的に信じている “良店” というものはやはりそのセレクションがパーフェクトにつじつまが合っているのです。どこの国でも多くの大型店舗がその体力を武器になんでも取り揃えるようになってくると、店が持つべき”選択する力”というものに対する意識がどんどんと失われていくことが見受けられます。そしてまた多くの人はアマゾン等の通販サイトで安価に手軽で物を手に入れることができることも知ったという現状もあります。しかしながらやはり店はどんな場所にでも必要なのです。そして店の存在意義を一手に引き受けるものはやはり “サービスとそのセレクション” だと僕は信じており、とくに良店と呼ばれる店の持つセレクションを見ながらどんなバイヤーがどんなイメージで買い付けたかを見究めることは僕にとってとても楽しい遊びのひとつでもあり、同時にその店がどのポジションに存在するのか、したいのかを明確に表すものさしなのです。

長くなりましたが、彼らはもちろん最重要としてサービス(修理)に特化しており、その延長線としてアカデミック(メカニック養成講座)にも力を入れています。そして競技と言うものから少しだけ距離をおいてSurly LHTを全サイズをフロアーにおいていたり、(個人的には現在大流行している太いタイヤのものを売ることばかりではなく、まずは世界的に一番売れていて、そしてしっかりと使いきられているこのツーリングバイクをきちんと販売できる店が国内にも数店は必要ではないだろうかと今更ながら若干不安視しています。)オリジナルのツーリングバイクをWinter Bicyclesに頼んでPericanという名でとてもリーズナブルな価格にて提案したりと、もう隙を見つけることが困難なくらいです。

 

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そして時が過ぎ、今度は僕らの創りだした商品を片手にお邪魔したのです。こんなことになるなんて実際には想像すらしていませんでした。
正直SimWorksを見つけてくれたのは彼らの方でした。 彼らは僕らの盟友でもあるHunter Cyclesのリックから商品を仕入れているというきっかけで僕らのプロダクツに興味を持ってくれてアプローチをしてきてくれたのでした。彼らのセレクションには僕らの仲間のものも多数含まれており、先ほど名前を上げたHunterCyclesのHunter NUGZStrawfootのエプロンやかばん類も扱っています。もちろんNITTO製品の充実には眼を見張るものがありますし、本所工研のバリエーションも国内ではほぼ見ることが出来ないほどの取り揃えをしています。その中にSimWorksのオリジナルパーツも現在ディスプレイされているはずです。もしサンフランシスコにお寄りの際はぜひBOX DOG BIKESにお立ち寄り下さいませ。そしてその運営のサポートをするためにだと思ってサイクルキャップやジャージなどをお買い上げしていただくといいかもしれません。
 
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-Fresh Air Bicycles-

1943 DIVISADERO STREET, SAN FRANCISCO, CA 94115
TEL 415-563-4824
www.fabsf.com

 

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Fresh Air Bicyclesは同じく現在のサンフランシスコを代表する地域密着主義を徹底的に哲学とするお店です。
店主のトラビスはとても長い間 Free Wheel Bicyclesのヘイズ店店長として働いてきました。もう今では知っている人のほうが少ないと思いますが、再度登場しますMASHの当時のオフィスの斜め前に位置していたサンフランシスコの地域主義を代表するお店がこのFree Wheelでした。
なぜなら?トラビスが店長だったからです。 生粋のレーサーである彼はもちろん最先端の技術も精通していますが、それ以上に歴史や経験を重んじ、かつコニュニティーの存在を信じ、時に助けることによって得た信頼は永きに渡り続かれるということを信じています。 そんな話を彼の口から伝えられた時はまるで過去の日本的なアプローチに通じるなとも感じたのです。

 

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そして現在彼が運営するFresh Air Bicyclesに関しても同じコンセプトが見え隠れしています。特に大型店のような潤沢な在庫を持つわけではなく、自分たちが信じた商品だけを選択もしくは製造したうえで、徹底した接客意識とセンスオブユーモアで伝えあげ、その商品の持つ意味を納得してもらい買って頂く。 ホームページのコンセプトページを見ても分かるようにその姿勢を貫くことによって得た結果をトラビスは自負しながら日々お店に立っているのでしょう。

 

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また今回の旅で深く感じたことはバイクメカニックという仕事はどの街でも必要とされているということです。そしてもしメカニックとして有能ならばとても重宝され良い報酬をも得れるという事実です。 現にFresh Airで働く彼はニューヨークのキングコグの元メカニックでした。そして世界を見るためにヨーロッパに渡り2〜3のショップとビルダーの下でメカニックをした後にガールフレンドの住むサンフランシスコにやってきて、現在はFresh Airと最近出来たオークランドのキングコグでもメカニックとして働いています。(ゆくゆくは日本に来てメカニックをしたいそうなので外人メカニックが欲しいお店のオーナーはぜひ彼にコンタクトしてあげて下さい。)そして僕は思いました。私たち日本人の繊細な技術は何処に言っても必ず通用するだろうと。 海外の大味なサービスを経験すると日本のサービス精神はアメージングに感じてしまいます。そんな長所を片手に世界に飛び出してみて、そこから得た経験を輸入してみてはどうでしょうか? なのでぜひどのポイントからでもいいと思うので絶対に英語を話せるようにしておきましょう。より良きサービスはコミュニケート無くしてはありえませんので。
そして話が少し変わりますが、腕に自信を持つショップは積極的にアカデミックサービスを提供して、より腕の良い人間を育ててみたりしてはいかがでしょうか? 生徒がライバルになられても腕に自身があるはずなのでもちろん構わないと思いますし、むしろサービスを提供する窓口が街に増えコミュニティーは盛大に喜ぶはずです。 そしてそのショップは腕利きを輩出するショップとしてその街では抜きん出ることになると思います。
 
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話が少し外れはしましたが、結論としてやはり海外に行くととても多くのことを学べます。 そこからはむしろ日本が多くのことで優っているということも理解できることでしょう。 しかしながら決定的にわが国が失ってしまっていることが一つあると感じるかもしれません。 
最初にあげた ”活気” というものです。 
クサイことかもしれませんがそんな活気ある社会、(これでは話が大きくなりすぎてしまうので)活気のある自転車コミュニティーを僕は常に欲しています。
 
生きて成長するという活気。 自信の存在を鼓舞する活気。 社会を楽しくするための活気。
 
モノを売るということだけに必要以上に従事してきた感のある僕ですが、やはり今、ますます思うことは好きなことを楽しみながらしっかりと対価を得る方法を考えたいのです。 そして自転車産業従事者がより活気のある好きなことで対価を得ているという意識を常に発信し続けるそんな活気も必要ではないのかと思うのです。 そしてそんな国が確実に存在しているのです。
 
“活気”を確実に対価に変えている街、”ポートランド” に次回は行ってみましょう。

 
 
Text by Shinya Tanaka
Photo by Rie Sawada