FEATURE
2019/4/6
BACK TO OREGON TOUR #02

Photo by Keita Oodaira & Takashi Inoue / Text by Keita Oodaira

        焚き火の時間

自転車での旅をこうしてアメリカでしているだなんて、数年前の僕には全く想像できなかった。
本当に人生なんてどうなるかなんてわからない。

想像を超える出会いや経験の重なりがこうしてアメリカ、オレゴンへと導いてくれたのだと思うと感慨も深い。

この旅の道中に何度もそんな風に人生を振り返るような時間があった。
毎晩のように焚き火を囲み、燃え盛る火をジッと見ては物思いにふける。

とても贅沢な時間だった。

毎晩の焚き火はその辺に落ちている枯れ葉に火をつければあっという間に燃え、すぐに立派な炎となる、枯れ落ちた枝を辺りから拾い集めを繰り返し、なるべく炎が絶えないようにした。

この時期はカリフォルニアの方で大規模な山火事も起きていた。 僕らの道中でも山火事が過去に起こった後のトレイルがいくつもあった。 これほど簡単に焚き火ができるほど、乾燥した状態であればこれほどの大規模な山火事が起きてもおかしくないと容易に想像はでき、とにかく火の後始末は本当に慎重にやらなくてはならない。 旅の相棒カイルからもそのことをしっかり教えてもらった。 彼は小さい頃から両親や生きてきた環境からどれほど火の後始末が重要かを自然と学んでいたようだ。

寝る前には焚き火に水をかけ、しっかりと消したことを確認してテントに入る、これが一日の終りのルーティーンとなった。

   ハンバーガーの美味さに笑顔がこぼれた

旅をして4日目くらいにようやく旅の流れというか、生活の仕方にも幾分か馴れてきた。

最初は筋肉痛で朝起きた時は多少の疲労が残っていたが、徐々に体も慣れた。 イノッチも良く寝付けずにいたが、ようやくぐっすり眠れるようになったと言っていたのもちょうどどその頃。

厳しいスタートとなった1日目のようなとてつもなく長い登りもなく、これぞ僕らが望んでいたトレイルライドだ! とふたりの笑顔も増えていった。

3日ぶりにたくさんの人がいるところに着いた。

湖沿いにあるリゾート地のCactus lake。
レストランも併設し、食料の補給ができた最初のスポットだった。 僕らはこの瞬間を待ちわびていた。 レストランに行くとハンバーガーにフレンチフライにミルクシェイクにビールを注文、マジで美味すぎて夢中になって食べた。

しばらくインスタントフード三昧だった僕らは、人が作ってくれる温かい食事をとても欲していて、やっぱり食事は幸せな気持ちにさせてくれることも実感。

ここでまた数日分の食料を計算し、買い揃えた。
ここで買わないとまた2、3日しばらく買うところがないという不安から、多少買いすぎてしまうのだけど、それでも安心を手に入れたいという気持ちが重要だった。

綺麗な大きな湖を見ながら休憩をしていると、バイクパッキングをした50代くらい?のおじさんたちがやってきて僕らに話しかけてくれた。

カイルが聞くところによると、どうやらこれから僕らが行こうといている道を辿って来たらしいが、倒木が多く担ぎが大変だったので時間が思った以上にかかったらしい。

その情報で急遽予定を変えて、僕らはオンロードで迂回ルートを回ることにした。
こういった同じ旅人からのありがたい情報に今回の旅もだいぶ助けられた。

この旅一番のキャンプ場へ

しばらく走り続け、その日のキャンプ場であるSparks lakeに到着。

このキャンプ場は本当に景色が素晴らしくて、今回の旅の中でも強く心に残ったキャンプ場になった。 目の前にある圧倒的な自然の景色に言葉もなく、ずっと眺め続けて入られた。

次の日の朝、カイルが茂みから抜いてきた紫のお花を、落ちていた小さな岩で挟みテーブルの上に置いていた。それだけでカイルがどれだけナイスガイかわかるんだけど。

そのことが本当に豊かな気持ちにさせてくれ、最高の朝食の時間となった。

  ブリテンブッシュホットスプリング

ルートマップ上にあるホットスプリングに行こうとカイルが言った。

なんとなく「温泉」とだけしかイメージできなかったが、どうやら面白い場所のようだと教えてくれた。 なんか良さそう! 行きたい! 3人ともに高まり、カイルが電話で予約してくれた。 こういうとき英語力のない僕らはカイルの存在にとても助けられる部分がたくさんあった。

それから3日後、チェックインの15時よりもだいぶ早く目的地へと到着。

とても広く気持ちの良い大自然の敷地の入り口に小さな受付の小屋があった。 駐車場にはたくさんの車が止まっていたが、自転車で来るような僕らのような人はいなそうだ。 施設の地図をもらい、ひとしきり説明を聞いた。

食事は当日夕方6時、翌日朝8時、昼1時にロッジへと時間になったら行く。
それ以外は特に決まりごともない。
僕らが泊まるのは小さなコテージにベッドが3つあったんだけど、コテージの鍵などもないらしい。

チェックインは15時以降ということなので、僕らは近くの川で一休みしようと向かった。

そこは何だか不思議な雰囲気の場所で、とてもワクワクした。

川へと向かうと階段を降りたところから人の声が聞こえた。自転車から食事や着替えの荷物を持ち、階段を降りた。

その光景に僕はあまりにもびっくりした。
なんと川辺で遊ぶ老若男女がみんな全裸だったのだ。

僕は後ろを振り返り「イノッチー、早く早く。」と急かした。 まさかイノッチだって階段の下には全裸の人がいるだなんて想像していなかったから、階段から下を覗き込んだ僕らは超笑った。 いやらしい意味ではなくて、何だか面白かった。

このタイミングでヌーディストビーチみたいなカルチャーに触れれるとは思ってもみなかったのだ。 川辺に降りたらカイルもすぐさま服を脱いで川へと飛び込んだ。 泳げない僕でさえも飛び込んだ。 状況にもだいぶ慣れ、川辺でしばらく休んだ。

地図を頼りにこの施設を散策すると、ここには瞑想をする建物、ヨガの部屋、サウナ、スタッフだけが入れる大きなキッチン小屋、お土産小屋、ファイヤーサークルなどなど、そしていくつもの小さな露天風呂が大自然の中にあった。

温泉も日本のような大きなものではなく5~6人入れるくらいの小さなものがいくつもあった。 温泉もまた川辺での風景と同じで全裸で混浴だった。 最初だけ緊張したけど、すぐに慣れた。

18時の夕食どきに合わせて、食堂になる大きなロッジへ向かった。 時間になるとゾクゾクと人が集まって来て、およそ100人以上はいたんじゃないかと思う。

食事はビュッフェ形式で全てオーガニックの野菜を中心とするベジタリアン・スタイルでどれもこれもとても美味しかった。

旅の途中は野菜不足になりがちがった僕らにとってはとてもありがたく、ここぞとばかりに僕らはベジーピザを何枚もおかわりをした。

お腹を満たした僕らはまた、また川でゆっくりしたり、温泉に入ったり、広い庭でとにかくのんびりと過ごした。

この場所はもちろん携帯の電波はなく、wifiもなかった。
そこで過ごす人々の多くは本を片手に持ち歩き、思い思いの場所で読書をしていた。
ヨガをやる人もいれば、瞑想している人もいた。
荷物をコテージに置いたまま鍵をせずに出かけても、何の心配も感じなかった。

僕の解釈だと、そういう意味でもここは療養所のようなところなのだろうと思った。 あえて外の情報を遮断して、ゆっくりと自分と向き合う時間を大切にする場所なのだろう。 僕らも電波があるところになればスマホばかり触れていたのだけど、ここでは自然の中で過ごすことと自分自身に向き合う時間が多かった。 それはとても安らかな時間が流れてたように思う。 ここに来る人たちもおそらくそういうものを求めてきているのだろう。

僕らはいままでの8日間ほどの旅の疲れをそこでしっかりとほぐし、とにかくリラックスすることに努めた、そして本当にここに来てよかったと心から思った。

ぐっすりと寝て起きたら朝7時すぎ。
森に差し込む光がとても綺麗でしばらくぼーっと見とれた。

時計を見るともうすぐ朝食の時間、すぐに準備をして食堂へと向かった。 ロッジにはまたたくさんの人が集まってきていた。

朝食ではマフィン、ヨーグルト、サラダ、スープなどなど優しい食事がずらりと並んでいた。 ゆっくりと食事をしていると、白人の男性が話しかけててくれ、僕らは自転車旅をしていることを話すと、彼はとても嬉しそうに聞いてくれ、「good luck」と告げられ、別れた。

この旅の中では度々こう言う些細な出会いがあり、自転車に乗る僕らに話しかけてくれる人がたくさんいてくれた。 その度に心は温まり、来てよかったと思えた。

オレゴンに住む人たちはとても優しい。 少なくとも僕らがこの旅を通して出会った人はみんなそうだった。

13時にもある昼食は今回諦め、僕らはまた荷物を丁寧にパッキングし直し、出発の準備をした。 できれば数日間この場所にい続けたいと思うほど居心地がよかったのだけども、次も必ずまたここに来ようと心に決め、午後になる前にまた走り出したのだった。

でもまたスタート直後に続く長い上り坂に悶絶し、さっきまでいた天国のような場所に帰りたいと思いながらもペダルを踏み続けた。

僕らは励ましあいながら旅を続けた。


BACK TO OREGON TOUR #01
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